12-09-30 : となりの弁護士「破産は怖くない」(弁護士原 和良)

Q 会社経営に行き詰まり、破産を考えていますがこれまで積み上げてきたすべてを失うようで怖いです。
A 一般的に経営が経済的に破綻してストップしてしまうことを倒産と呼んでいます。破産とは、債務超過・支払い不能の場合に、破産法の規定に沿って法的な清算を行うことを指します。不渡りを出して銀行取引停止となることは倒産ではあっても破産ではありません。会社を整理する場合には、裁判所の手続きを利用する法的整理と利用しない任意整理とに分かれます(その中間にADRなどの調停手続きも存在しますが任意整理の一つと考えて良いでしょう)。
法的整理の中には、会社の存続を前提とする民事再生手続(債務者が引き続き経営権を掌握)と会社更生手続(債務者は経営から撤退)があり、破産手続は会社の存続を前提とせず残余の資産を換価して債権者に配当して会社を消滅させます。
金融機関からの融資についてほとんどの場合、社長が個人保証をしている日本では、会社が破産すると社長も破産せざるを得ないというのが実情です。
個人の破産の場合、20万円以上の資産価値のある資産は原則として破産財団(配当金等の原資)になりますので、家や車、生命保険の解約返戻金などは、原則として失うことを覚悟しなければなりません。しかし、破産及び債務の支払責任を免除する免責の制度は、本来個人の再起と生存権を保障する手続きですので、家財道具や手続開始後の収入などは破産手続きで取り上げられることは原則としてありません。戸籍に掲載されることもないし、選挙権がなくなることもありません。以前は、破産者は会社の役員になれないという制限がありましたが、会社法改正によりその制限も撤廃されました。また、現在の裁判所の運用は、99万円以下の現金は、申立時に保有していても構わないということになっています。
破産で清算されるのは、金銭的債権債務であり、経営者としての人格や経営ノウハウ、経験、人脈や友人関係、を取り上げるものではありません。カーネル・サンダースが破産によりすべてを失ったのは60歳の時。その後、ケンタッキー・フライドチキンを開業し、世界的成功を収めました。リセットするのに遅すぎることはありません。

以 上
(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2012年9月号掲載)

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