10-04-30 : となりの弁護士「更新料契約は無効」(弁護士原 和良)

1 昨年7月、8月に、京都地裁、大阪高裁でアパート賃貸借契約の更新料支払いの合意は、消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する契約条項は無効とする趣旨の規定)に違反し無効である、との判決が出た。
2 これまで、私立大学において「滑り止め」のために併願受験校に収めた入学金授業料について、結果として入学金授業料を収めた大学に入学しなかった場合について、契約の定めにかかわらず、入学金以外の費用の返還を大学に命じた最高裁判決(平成18年11月27日)があるが、これも消費者契約法を根拠としている。
3 今回の京都地裁、大阪高裁の判決から考えると、更新料が無効であれば、借地契約における更新料はどうなのか、礼金の支払(礼金は文字通りお礼であって支払いを強制されるべきものではない)、保証金の償却(不動産使用による価値の減価は賃料で補てんすべきものである)も、経済的合理性のない支払であり、無効と考えるべきではないかということになる。今後の不動産事業の実務に与える影響は大きい。
4 消費者契約法は、事業者と消費者との契約にしか適用されない。仮にこれらの更新料無効判決が、最高裁で確定したとしても、更新料が取れなくなるのは、消費者が契約した場合だけであって、会社や個人事業者が営業目的でアパートやビルを賃借した場合には、適用されないことになる。しかし、小規模店舗でほそぼそと商売をやっている自営業者が、果たして法的保護に値する消費者から除外されてもよいものだろうか、更新料が経済的な合理的根拠のない不利益であることは、それが事業者だろうと消費者だろうと変わらないのである。他方で、私は、わずかばかりの生活費を賃料収入で確保している高齢者や障害者のアパート経営者のクライアントも抱えている。すずめの涙ほどの賃料収入と更新料・礼金が生活の命綱という人にとってこの判決は大変厳しい。
5 更新料無効判決は、考えるべき課題を次々と提起している。最高裁がどのような判断を下すのかはこれからであるが、いずれにしても消費者保護は今の時代の流れである。これまで、慣習的に支払いが事実上強制されていたものが、消費者の保護という観点から厳しくチェックされることになるだろう。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2010年4月号掲載)

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