07-06-01 : となりの弁護士「クレーム処理」(弁護士原 和良)

ビジネスには、ミス・失敗はつきものである。一生懸命やっても、また一生懸命困難な課題に挑戦しているからこそ、人間である以上失敗は不可避である。そして、ミス・失敗は顧客からのクレームとして跳ね返ってくる。

避けられるミスはなるべく起こさないことだが、ミスが不可避である以上、起こしたミスとそれに対するクレームをどう処理するかが、大事である。クレームに対する最悪の対処法は、クレームから逃げ回ることである。

その次にまずい対処法は、あれこれと弁解して、自分のミスを小さく小さく見せようとすることである。頭のいい人は、弁解を考えるが、顧客が一番聞きたくないのが弁解である。まずは、頭(こうべ)を垂れることが大事である。

クレームをいう顧客の目的は、「覆水を盆に返す」ことではない。原因をしっかり分析して、二度と失敗しない対策をとってもらうこと、クレームに対する姿勢を見極めたいのである。

顧客のクレームは、見方を考えればこれまで表面的な付き合いしかなかった顧客と人間的な信頼関係を深める最大のチャンスである。いい会社、いい営業マンはクレームがないのではなくてクレームをきっかけとして必ず次の仕事につなげている。私の経験からも、どこかで大喧嘩していいたいことを言い合った顧客とは、何故かその後も、一緒に仕事をしていることのほうが多い。

顧客はクレームの中で、はじめてその人の人生観や仕事観を披瀝する。普段はしゃべってくれない本音を話してくれる。普段は遠慮して話してくれなかった自社に対する評価や弱点を包み隠さず教えてくれる。その意味で、クレームは願ってもないビジネスチャンスなのである。

ビジネスの世界は、仕事が増え責任が増すと、常に新しい課題とクレームが与えられる。まるで、神様がいたずらでもしているかのように。一難去ってまた一難の繰り返しが、ビジネスだといっても過言ではない。子どもが、コンピューターゲームに熱中するのも、第一フェイズをクリアしてほっとしてたら次のフェイズに新たなハードルが待ち構えているからである。

日々クレームに逃げずに付き合い、それを乗り越え、また次の新たなより難しいクレームに向かい合う。人からクレームを言われなくなったら、その人の仕事は終わりである。クレームを言ってもしょうがないと思ったら人はクレームすら言わなくなるからである。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」2007.6掲載)

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