06-05-01 : となりの弁護士「つぶれた「さおだけ屋」」(弁護士原 和良)

1 さおだけ屋が倒産し、破産申立てを行った。

某日、裁判所で裁判官に破産決定をもらうために面会。オープンスペースの東京地裁21部の面接室には周囲の注目が集まった。

裁判官「物の本によると、さおだけ屋はつぶれないじゃかなったんですか」、私「何をおっしゃる。さおだけ屋もつぶれることがあるんですよ」……裁判官室は、大爆笑。裁判所はさおだけ屋はつぶれないという信仰があるようだ。彼が何故破産するしかなかったのか、私が進める破産に至る経過の説明に、部屋中の職員が耳を澄まして聞いていた。

2 かのつぶれないさおだけ屋は、兼業でやっているさおだけ屋の話。さらに、さおだけ一本から家のリフォームまでやり、海老で鯛をつる。

しかし、わが依頼者のさおだけ屋は、さおだけ屋プロパーの仕事である。今や、さおだけは、ホームセンターでも買えるし、インターネットでも売っている。生活が成り立つわけがない。

かのさおだけ屋のように、さおだけ屋を入り口に関連ビジネスで利益をあげるほどこの商売は、現実にはうまくいく商売でもないようだ。

3 つぶれたさおだけ屋には、もう一つの背景がある。彼は、在日朝鮮人である。竹島問題、拉致問題:と、南北朝鮮との関係は毎日世間を騒がせているが、在日朝鮮人にとって日本社会は非常に住みにくい社会なのである。まず、子どもの時代から差別される。大人になっても就職先がない、日本国籍がないために公務員になれないなどの偏見と差別の壁である。これだけグローバル化が叫ばれる一方で、最近最高裁は、東京都が日本国籍を有していることを管理職職員の採用基準としていることについて、平等主義違反や職業選択の自由の制限にはあたらないとして、東京高等裁判所の出した違憲判決を覆して合憲判断をした(05年1月26日)。最近格差社会が話題になっているが、在日外国人(とくにアジア系)にとっては、日本はとっくの昔から格差社会なのである。

パチンコ屋やラブホテル経営、高利貸しの金融業者に、「金」さんや「李」さんが多いのは、日本社会の経済市場の閉鎖性に由来しているのである。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」2006.5掲載)

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