18-02-08 : となりの弁護士「人権弁護士は、もっと企業法務にコミットすべきである」(弁護士 原 和良)

1 ホワイト弁護団が旬報社から「めざそう!ホワイト企業」という本を出版しました。https://lohaco.jp/product/L02971007/

中小企業は、日本の企業の99%を占めています。そして、全体の90%以上の雇用を抱えているのが中小企業です。日本の中小企業の特質は、労働者を「劣悪」な労働条件で働かせている一方で、中小企業自身が大企業の系列企業、下請・孫請企業として有無を言えない劣悪な取引条件で仕事を押し付けられている奴隷的存在です。

日本社会の民主主義的発展や国民全体の豊かさを実現するには、中小企業が正しいルールに基づき持続可能な発展をすることが私は重要なことだと思います

この本では、「ホワイト企業」とは、①経営者・経営陣が法律を適正に遵守しようとする意欲を有し、②会社内規等が法律に準じて整備され、実際の運用も適正に行われており、③それは労働者自身の実感においても裏付けられる、という会社と定義しています。そして、このようなホワイト企業の経営実践こそが、実は長期的に見て利益を出し続ける優良企業となる可能性が高いことを説いています。

 

2 「日本で一番大切にしたい会社」

このような考え方は決して突飛な発想ではありません。2008年に出版された坂本光司法政大学大学院教授の「日本で一番大切にしたい会社」という本があります。https://www.amazon.co.jp/日本でいちばん大切にしたい会社-坂本-光司/dp/4860632486

坂本教授は、会社は誰のために存在するのかという問いに対して以下のように述べておられます。「最近、多くの人が勘違いしているのですが、会社は経営者や株主のものではありません。その大小にかかわらず、従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業に直接かかわるすべての人のものなのです。…欺瞞に満ちたいいかげんな経営をしていると、離職するまじめな社員が続出し、商品の生産や販売すら不可能になってしまいます。…」

坂本教授は、5つの使命と責任(①社員とその家族を幸せにする。②外注先・下請企業の社員を幸せにする。③顧客を幸せにする。④地域社会を幸せにし、活性化させる。⑤自然に生まれる株主の幸せ。)をこの順番で果たすべきだと提唱しています。

 

3 人を大切にする会社は、グローバルスタンダード

しかも、自然環境や労働環境に配慮して企業活動を行うというのは、今やグローバルスタンダードでもあります。日本にいると企業は利潤だけを追求し株主利益の最大限の追求をすればよい、と錯覚しがちですが、それは日本の企業が世界標準に遅れているだけの話です。だからこそ、今日本の大企業は、世界市場で大苦戦をしているのです。

「めざそう!ホワイト企業」に書かれている内容は、100%私の考えるこれからの日本の企業のあり方と合致する良書です。

このような視点で、もっと多くの弁護士が、企業法務にコミットできればよいと思います。

以上

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