18-05-17 : となりの弁護士「財務事務次官のセクハラ騒動~国家の崩壊」(弁護士原 和良)

1 財務省・元福田淳一事務次官の女性記者へのセクハラ発言が話題となっている。事務次官は、混乱の責任を取って辞職したが、あれだけ動かぬ証拠があっても、未だ本人はセクハラの事実を否認するという前代未聞の事態となっている。

2 被害者であるテレビ朝日の女性記者が、ICレコーダーに録音した会話を、自社ではなく「週刊新潮」に公表したことが、一部で取材取得源秘匿というメディア倫理に反すると批判されている。テレビ朝日自身も、外部への情報公開を記者会見で否定的に評価しているし、読売新聞も社説で批判をしている。しかし、この評価については、私は違和感を感じざるを得ない。

3 マスディアやそこで働く記者の情報取得源秘匿義務は、マスメディアの民主主義社会で果たす役割すなわち国民の知る権利を保障するという重要な役割に鑑み、そこに情報を提供してくれる人のプライバシーを守らないといけないというところに根拠を持つ。もし、メディアが情報提供者のプライバシーを保護せず、誰がその情報を開示したのか、情報源が特定されると、当該情報提供者は情報を開示したことによる報復を恐れ、誰もメディアに重要な情報を開示できなくなるであろう。

4 しかし今回、他社に持ち込んだのは、取材で得た情報ではなく、セクハラの事実そのものである。もし、これがセクハラにとどまらず、実際に胸を触られたり、キスをされたり、抱きつかれていれば、強制わいせつ罪という立派な犯罪行為になるところである。
セクハラという違法行為を告発するのに、自社以外に告発してはならない、情報を公開してはならないというのは筋が通らない。これが、秘匿義務違反だとするとおかしな結論になる。すなわち、事務次官は、セクハラをしてもそれを秘匿してくれると信頼してセクハラ発言をしたのに、セクハラを秘匿してくれなかった。これでは、今度から安心してセクハラ発言ができないではないか、ということになる。こんなために取材取得源秘匿義務が保障されているのではない。

5 ついでに言えば、麻生財務大臣の発言もひどい。「だったらすぐに男の番記者に変えればいいだけじゃないか。だってさ(女性記者は)ネタをもらえるかもってついて行ったんだろ。触られてもいいんじゃないの。」と、犯罪が起きても自業自得という開き直りである。確か、安倍政権は、女性が輝く社会を目標としていたはずだ。国家というシステムが溶けていっているとしか思えない事件である。

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