03-10-01 : ひとこと言わせて頂けば「ザ・ジャッジ」(弁護士原 和良) 

最近テレビ番組で、法律トラブルを題材にしたクイズ番組が大流行だ。嫁姑の喧嘩や離婚、相続、借金をめぐるトラブルなど題材にして、現役弁護士たちが回答するが現実はクイズほど単純でない。

 現実におきる事件は、千差万別である。同じように見えるトラブルでも、ひとつでも前提条件が違ってくると結論は全く逆になってしまう。白か黒か、やってみないとわからないのが裁判だ。さらに弁護士は、悲しいかな分がある事件の相談だけを受けるわけではない。数学的な確率からいえば50%は不利な立場の人間の代理人として交渉したり、訴訟の代理人となる。職人的にいえば、勝てる事件に勝つのは当たり前。分が悪い事件を受けたときに、どう被害を最小限に食い止めて依頼者の利益を守るか、さらに分が悪い事件で勝つかが腕の見せ所なのである。だから、分が悪い事件では、有利な事実を血眼になって探し出して裁判所に提出する。それでも、法律論で負けそうなときは、法律が如何におかしいか、判例が如何におかしいかの理屈を考える。こうして、勝敗が決まっていくのが現実の裁判だ。
ともあれ、実際の裁判は、楽に勝てると思って受けた事件が、途中から思わぬ不利益な証拠が出てきて苦戦したり、協力してもらえるはずであった証人が相手に寝返ったりして、終わるまで悪戦苦闘することがしばしばだ。その度に私の仕事のスケジュールはどんどんずれ込んでいき、とっくに終わるはずの仕事がズルズルと長引いて終わらない。かくして私の事務所は、早く仕事をやってほしいと催促の電話に追われ、「行列のできる法律相談所」になってしまうのである。

(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2003.10掲載)

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