07-10-01 : となりの弁護士「ビルマの惨劇」(弁護士原 和良)

1 先月26日、ミャンマー政府は、平和的デモを行う僧侶たちに対して、襲撃を行うという暴挙に出た。その後、世界的な人権団体の情報によると、200名を超える僧侶が弾圧の犠牲になっており、監禁され、行方不明になった人たちの数は知れない。軍政府は、国内の報道統制を敷き、インターネットも切断された状態だ。
イギリス自治領であったビルマは、第二次大戦中日本が占領。終戦後は、48年にイギリスから独立するが、軍によるクーデターが繰り返され、今日まで政変が繰り返されている国である。88年には、民主化運動が高揚し、90年総選挙では、アウン・サン・スーチー率いる国民民主連盟が圧勝したが、軍のクーデターにより民主化は挫折。89年から今日まで、スーチー氏は自宅軟禁状態である。
議会もない、憲法もない、表現の自由もない国だ。なお、正式名称はミャンマー連邦だが、軍事政権の承認に消極的な欧米、人権団体は、『ビルマ』という名称で表現することが多い。

2 日本とは、極めて親しい国で、ビルマの軍歌は、日本の「軍艦マーチ」を参考にした旋律のものもあるという。日本政府は88年の軍事クーデター後に成立した軍事政権をいち早く承認し、以来世界最大のビルマ援助国になっている。
日本にも政治的迫害を逃れて移住してきたビルマ難民が少なからず暮らしているが、政府が難民として認めるビルマ人はわずかでしかない。

3 マスコミは当初、ビルマの惨事をセンセーショナルに報道した。長井カメラマンの死も日本人にとっては居たたまれない出来事だった。
グローバリズムを語るとき、それは経済だけのグローバリズムが進行しているのではない。民主主義もグローバル化している。アジアの遠国の問題ではなく、同時代に生きるアジア人としてこの問題を日本人がどう受けとめるのか、その想像力と行動力が問われているのだと思う。国際貢献の仕方は、軍隊を持たずともいくらでもあるのではないか。
自称ボーダレス弁護士の私としては、目の前の問題としてビルマの民主化を何としても支援したいと思うこの頃である。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」2007.10)

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