23-04-28 : となりの弁護士「レジリエンスを鍛える」(弁護士 原 和良)

1 レジリエンスとは、社会的ディスアドバンテージや、自分に不利な状況において、自身のライフタスクを対応させる個人の能力と定義される。目まぐるしく社会環境が変化し、かつ閉塞感の強い現代社会を生きていくには、大きなストレスがかかる。
  実際、職場や学校、諸組織の中で人間関係をめぐるトラブルや社会不安を背景に、心療内科で予約が取れないほど心を病む人が増えている。

 

2 弁護士は、もともと他人のストレスを引き受ける仕事であり、レジリエンスが必要とされる。とりわけ、気を遣うのはクライアントとの距離の取り方、信頼関係の構築・維持である。どんなに気をつけていても、間違いを犯すことはあるし、間違いを犯さなくてもクライアントとのボタンの掛け違いからトラブルになることは避けられないし、日々その繰り返しである。
  アメリカの調査では、もっとも心の病気が多いのは弁護士であったというのもうなずける。

 

3 自分の場合、心の健康状態を維持するために以下のようなことに気をつけている。
(1)一つ目は、クライアントの苦悩に共感しても、同調はしないこと。常に客観的にクライアントの置かれている立場を把握してこそ、クライアントの力になれる。一緒につぶれてしまってはならない。
(2)二つ目は、「答えはクライアントの心の中にある」というコーチングの立場に立つことだ。決して「正解」を押し付けてはいけない。クライアントの人生の選択を、背中を後ろから軽く押してあげる存在でありたい。
(3)三つ目は、時々、うまくいったこととうまくいかなかったこと、を振り返ってみることだ。先々週の私の仕事のうち、うまくいった仕事は15件、うまくいかなかった仕事(不満足な結果)は4件であった。15勝4敗である。更に、うまくいなかった仕事は、まだうまくいかなかっただけであってこれから巻き返せばよい、と考えると、15勝4引き分けだと考えることもできる。それは、起きた事象に対する心の持ち方の問題だ。
(4)経営学では、最近サービスリカバリー(システム)という考え方が注目されている。ビジネスにはミスがつきものだ。ミスに顧客はがっかりし信頼を失う。その際に、ミスをカバーして結果的にうまくいったとき以上の顧客の信頼を得る。組織で、リカバリーのシステムを構築するのがサービスリカバリーシステムという考え方だ。

 

以上

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