1 「それでも地球は回っている」~子どもの頃に伝記で読んだイタリアの学者で「天文学の父」「近代科学の父」と言われるガリレオ・ガリレイの名言である。
ガリレオは、17世紀初頭に望遠鏡を発明し、天体の謎を解明、当時の常識であった天動説に対し、地動説を唱え始める。
ガリレオの地動説は、異端として危険視され、1616年、52歳の時に宗教裁判にかけられる。裁判では、今後地動説を唱えないように命令されたが、その後も地動説を維持し、1633年の2回目の宗教裁判で終身刑の判決を受け、1642年に死亡するまで地動説を貫く。
2 このガリレオの生涯から私たちが学ぶべきことは、その時代の多数者の考え、常識は必ずしも真理ではないということであり、常に物事には批判的な視点をもって対処する必要があり、一見突拍子もない考え方であってもその考え方を封じてはならない、ということである。
批判的精神がなければ、判例変更もないし、時代に即応した法律の改正もなくなってしまう。
成熟した民主主義社会では、常に異論や少数意見が尊重される寛容さが必要であり、そのような寛容さのある社会こそが、真に強い社会であると言ってよいであろう。
3 世界に目を向ければ、一国二制度を掲げる中国では、今年6月に香港で国家安全維持法が中国全国人民代表大会で可決・施行され、香港市民の政治的・市民的自由に対して世界から危惧の声が上がっている。旧ソ連邦から独立したベラルーシでは、ルカシェンコ大統領の独裁に対して反対する対立候補の政治家が拘束され、その妻スベトラーナ・チハノフスカヤ氏が今年大統領選挙に挑んだが、世論ではチハノフスカヤ氏圧倒的優勢の調査結果にも関わらずルカシェンコ大統領が再選を果たした。1991年のソ連からの独立以来、30年近く独裁政権が続いている。
4 このような報道に触れると、世界にはなんてひどい国があるのだと多くの日本人は思うだろう。しかし、これは対岸の火事ではないと私は思う。忖度により権力者の顔色をうかがうことに徹した官僚やメディアが重宝され、これに異を唱える心あるガリレオは、静かに排除されていく。今回の学術会議の任命拒否問題も、権力批判をするとどうなるかわかっているか、という見せしめとしか私には思えない。
ガリレオの悲劇はもうたくさんである。
以上