事務所で取り組んでいる特徴的な事件


別荘地集団管理契約をめぐる集団訴訟に取り組んでいます

近年、全国の別荘地において、管理会社と別荘所有者との間で、管理費の値上げや管理委託契約の解除をめぐり、紛争が発生しています。多くの別荘地の管理規約では、管理会社が管理費を一方的に値上げでき、管理業務の内容も一方的に決めることができるようになっており、別荘所有者が管理費や管理業務の内容を決定できる権利は管理規約上、保障されていません。別荘所有者は、管理費や管理業務の内容を承諾できない以上、管理委託契約を解除し管理委託契約から解放されなければ、望まない管理業務の提供を受け、その対価を支払い続けさせられるという地位に陥ってしまいます。しかし、別荘地の管理に関しては、建物の区分所有等に関する法律のような法的規制も存在せず、管理規約に管理委託契約の解除について明記されていないことも多いため、解除を求める別荘所有者とこれを認めない管理会社との間で紛争が発生しています。

弊所では、静岡県田方郡函南町に所在する南箱根ダイヤランドという別荘地の別荘所有者の方々から、管理委託契約を解除し、解除後の管理費支払債務が存在しないことの確認を求める債務不存在確認訴訟を受任し、平成22年2月16日に東京高等裁判所で勝訴しました(判例タイムズ1336号169頁)。この高裁判決では、管理委託契約が有償の準委任契約であることを前提とし、委任者である別荘所有者による民法656条、651条1項に基づく管理委託契約の任意解除権行使が有効であること、民法656条、653条1号に基づき委任者の死亡により管理委託契約は終了し、相続人に承継されないことが認められました。この訴訟では、管理会社が上告を断念したので、別荘の管理委託契約の任意解除の有効性について最高裁の判断を仰ぐには至りませんでした。
別荘地の管理委託契約の解除に関する問題は、民法651条1項の任意解除権行使の解釈という民法上の問題だけではなく、別荘地の道路や上下水道施設等のインフラ整備を含めた管理に関する行政の責任をも問われています。弊所では、民法学者や行政法学者の協力を得て、現在も全国の別荘地で管理委託契約の解除を勝ち取るべく、訴訟に取り組んでおります。