1 弁護士をやっていると気の遠くなるような複雑困難な事件に必ずぶち当たる。仕事柄それは、どんなに避けようとしても避けて通れない。
今年に入り、4年越しの複雑困難な訴訟が、急転直下の進展で和解解決した。当初は、関係する事件当事者間は水と油の対立状態で、おそらく両当事者の世代交代が起こらない限り、解決の道筋は見えてこないのではないか、という我が事務所が抱える最大級の難事件の一つであった。
2 どんなに糸がもつれていても、事件は、必ず解決する。これは、20年の実務経験でわかった真理である。解決の仕方は、様々であり、またその時には、悔しい解決だと思うときもあるが、とくかく紛争は、粘り強くもつれた糸を一つ一つほぐしていけば解決するものである。今回の事件もその念を改めて強くした。
3 時間とは、万能薬である。弁護士の仕事はある意味で忍耐が必要な仕事だ。やるべきことをやり尽くして、時を待つ。人の興味・関心、怒りは、永遠に持続するものではないし、持続できるものではない。問題関心の移り変わりと、感情の整理、争いという緊張状態から疲労感は、大局的に考えて、また将来思考で考えて、解決しようと人の気持ちを変えていく。
代理人は、クライアントの足元を懐中電灯で照らしてあげながら、道案内をするような役割を担うのだが、実際に足を踏み出すのはクライアント自身であり、期が熟すのを辛抱強く待つしかないこともしばしばである。
4 和解成立の日、担当弁護士の呼び掛けで、事務所の弁護士、スタッフで解決を喜ぶ慰労会が開催された。みんな担当弁護士の苦労を知っているだけに、わがことのように喜び、慰労した。一人事務所は気楽である。人が増えると苦労も増えるが、共同事務所には支え合い大きな目標を達成していくという共同事務所ならではの楽しみもある。チームで事件を解決する、そしてその解決をみんなで喜び、たたえあう。事務所にとって、貴重な経験になったことを感じた事件であった。
以 上
(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2015年1月号掲載)