13-03-31 : となりの弁護士「「幸せ」の再定義」(弁護士原 和良)

1 日々働いていて、また文化的歴史的背景を異にする外国へ出かけたり、また他国の人と交流していると、時代がものすごい勢いで変化していること、日本で「常識」と思われ続けてきたことが、実はもう通用しない時代に自分たちは生きていることに気がつく。

2 高度経済成長期に形成された日本的「常識」は、もうどこにもない。あると信じ続ける人には、理解できない現象が周囲で起きている。

便利なこと、消費すること、経済成長すること、が善とされ、その善を最大限に追求するため我を顧みず多数にしたがうことが「幸せ」への近道だと信じさせられていた。

大量生産大量消費の時代には、いかに効率的に物事を裁く能力が身につけられるかが評価の対象となり、学歴社会がもてはやされた。いい大学、いい企業に入って年功序列で定年まで働き続けることが「幸せ」のスケールとされた。女性は、結婚し、子どもを生んで子育てのために退職し、子どもが少し手がかからなくなったころにパートとして社会に半復帰するM字型雇用が日本経済における女性の典型的雇用形態となった。

3 今は、これらの概念がよくも悪くも多様化し、価値観は多様化している。転職は「不幸」。結婚しないのは「不幸」、子どもがいないのは「不幸」、離婚は「不幸」という価値観は、もう少数派となっている。成長と働き方のモデル、家族観と「よい」生き方のモデルは「幸せ」という誰もが一致できるモデルとしては崩壊しているといえよう。

4 憲法13条は、ダイバーシティ(個人を個人の視点から評価し、その多様な価値観や生き方をそのまま認める)から近代国家を説く。「幸せ」は、個人が感じるもので、決して外からモデルを押しつけられるものではないのである。

こんな時代は、さぞや政治家は大変であろう。しかしながら、われわれ民間人は、その価値観とその背景にある世界的規模の経済的変化に適用することにしか生き残る活路はない。経営者としては、もはや一つの価値観で組織をまとめることは至難の業。一人一人の部下目線でその目に映っている世界を見る。そこから各人の成長要求を支援する(MBO マネッジング・バイ・オブジェクト=目標による支援)ことが大事になってきている。上から押しつけず、まずは、理解せよ、それから理解してもらえ、という態度が大切だ(First , understand . Then, to be understood.)。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2013年3月号掲載)

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