12-03-31 : となりの弁護士「距離感」(弁護士原 和良)

1 (エ~、この事件の管轄は、○○地裁○○支部か。遠いなあ。)時々、依頼を受けた訴訟の管轄裁判所が地方の裁判所だったりすると、心理的に距離感を感じることがある。

人間、ルーティーンで慣れていることに対しては、抵抗はないが、慣れない新しいことに対しては二の足を踏むものである。

2 行きつけない地方(東京でもあまりなじみのない電車の路線の駅もそうである)では、駅までの時間や駅から目的地までの行き方がイメージできないので、人間の頭はイメージできないものに対して「遠い」という距離感を抱くのである。これは、海外でもそうである。ジョルダンで乗り換え案内を見ると、自宅までの通勤時間とさして所要時間はかからないのに、心理的距離感とは恐ろしいものである。

3 これは、所要時間だけでなく、金額的な点でも距離感の錯覚は多い。今や円高の影響もあり、九州へ3泊4日の温泉旅行に行くよりも、近場のアジア諸国(上海やソウル、台湾、香港、バンコク、マニラ…)に旅行に行く方が、実は安いのである。しかし、海を渡ること、言語と文化の違う地に足を踏み入れるということに対する抵抗感=「モンスター」が距離を作っているのだろう。

4 われわれ士業、とりわけ弁護士とクライアント・市民との距離感も同じことが言える。市民や中小企業と弁護士の間にある距離感、いわゆる「敷居が高い」という意識も、人間の想像上の「モンスター」であり、法律事務所や弁護士は実はそんなに遠くにあるわけでもないし、高いわけではないのである。

ともあれ、この距離感を埋めるには弁護士の側がモンスターとたたかい、距離感を払しょくするしかない。

弁護士が市民の中に積極的に出向いて接触すること、セミナーや講演などを開催すること、事務所に出入りしてもらう機会を増やすこと、いわゆるアクセス障害を一つ一つ除去する努力を積み重ねるしかあるまい。

5 そして、来てよかった、依頼して解決してよかった、と思ってもらうためには、それを裏付けるしっかりした技術、サービスを提供できることが前提であることは言うまでもない。技術と心、どちらも大事である。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2012年3月号掲載)

 

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