法曹界は、2007年問題で揺れている。暗記中心の司法試験ではいい法律家が育たないとして、3年前に、法曹養成制度の改革が行なわれ、大学にロースクールが新設された。来年は、旧司法試験の合格者1500名、ロースクール卒業の新司法試験合格者1000名、の合わせて2500名の合格者が出る見込みで、その後、毎年3000名ほどの法律家の卵が生まれる。
これが、さまざまな波紋を広げている。
一つは、ロースクール(法科大学院)で普通に勉強すれば、法律家になれるとして無用な試験競争緩和のために導入されたロースクールだったが、どこの大学もロースクールを新設しないと二流と見られるとロースクールを新設したため定員数が膨れ上がり、法務省が想定していた合格率70%にはとても届かないという問題である。来年は、50%程度の合格率と言われているが、留年者が翌年も受けるので、だんだんと合格率は下がっていく。年間2百万円前後の授業料を払ってロースクールを卒業しても、法律家になれないという現実に直面している。これが、ゆとりの法学教育とは裏腹に、過酷な受験競争を助長している。
もう一つは、受け入れ側の問題だ。試験合格者は、司法修習を終えて裁判官、検察官、弁護士になるのであるが、公務員は増やさないというのが国の方針であり、増えた法律家の多くは弁護士になる。しかし、急激な弁護士増で、就職を受け入れる法律事務所がない。弁護士就職難の時代といわれている。
もともと、法曹人口増の方針は、規制緩和路線のもと、企業が弁護士を競争させてもっと安く使いたいという要求から出てきた考え方だと言われている。他方では、トラブルが起こったときに身近に相談できる弁護士が日本には少なすぎるという市民の側の要求もあるのも事実だ。日本の場合、弁護士は都市部に集中し、裁判所所在地に弁護士が一人もいないという地方がたくさんあるが、この弁護士偏在問題はなかなか解決しない。日本の弁護士の半数は東京に事務所を構えている。何ともちぐはぐな状況である。
いずれにしても、この業界も変わらなければならないことだけは確かであって、この大波をチャンスと見て、新しい仕事に挑戦したいものである。
(弁護士原 和良「となりの弁護士」2006.8掲載)