12月(師走)は、何故か忙しい。日本人は、やっかいなことを年内に片付けたがる性向が非常に強い人種らしい。しばらく双方の考え方が対立して「寝ていた」事件が、年も押し迫ると、「この際解決したい」という気分になり、やたら示談や裁判所での和解が成立する。裁判所も、10時から5時までの通常の日程ではもう期日の指定ができないので、午前9時半とか、午後5時30分とかに和解期日が指定され、10分刻みで事件が処理されていく。さらに、これまでもやもやしながら抱えていたトラブルを年内に処理したいと、新たな相談事が次々と持ち込まれて来る(それもできることなら年内に解決したいという相談ばかりである)。すでに、私の手帳は、年内に処理しなければならない予定の仕事で一杯なのに、横から次々と事件・相談が割り込んできて、アクロバットのようなスケジュールになっていくのである。
他方、前々から出席を予定していた忘年会も顔を出さないわけにはいかないし、こんなはずじゃなかったのにと思いながらも弁護士にとっては何ともせわしい季節である(この原稿も締め切りを過ぎてしまい慌てて事件の待ち時間に書いている)。
何も、年を越したからといって事件の結論が大きく変わるわけではないのだが、「キリ」をつけるという文化があり、設定した締め切りまでに「キリ」をつけること自体が依頼者にとっては価値を帯びてくる。「キリ」の文化があるからこそ、だらだらとトラブルを引きずらず、結果的にはいいのかもしれない。
私も、一大決心をして、来年新しい事務所を構えることになった。だから、「キリ」をつけたい依頼者の案件を処理しながら、自分の身の振り方にも「キリ」をつけなければならず、今年の師走はいつになくせわしくなっているのである。
あわただしく1年が終わり、またあわただしい1年が始まりそうな気がする。
以 上
(弁護士原 和良「となりの弁護士」2006.12掲載)