1 7月23日、24日にフィリピン、ダバオ市で開催された「フィリピンにおける人民の権利のための国際会議」(「International Conference for Peoples’ Rights in the Philippines」=ICPRP)に、参加してきました。
同国際会議は、名前の通り、フィリピン人民が抱える様々な人権課題(米軍との軍事同盟の問題、国内での内紛、格差と貧困問題、海外で生活する移民問題、国家的開発のもとで強制退去を強いられている先住民族の集団的権利の問題)などを主なテーマとした国際会議ですが、同時にアメリカを軸とした西側諸国の世界的軍事支配、グローバリズム・新自由主義経済政策による人民の搾取、各国での人権抑圧などについて交流し、連帯を強めることを目的として開催された国際会議でもあります。
(ICPRP総会の様子)
2 5月9日に行われたフィリピン大統領選挙では、親米政権であったアキノ政権に代わり、汚職の追放と行政の透明化、薬物犯罪の撲滅、貧困の解消、ミンダナオ島を中心とした新人民軍(National Peoples Army)との内戦終結・和平協定の締結、を掲げるロドリゴ・デュテルテ大統領が当選し、フィリピン政治に大きな変化がもたらされるのではないか、との期待感に満ち溢れていました。同国際会議にも、デュテルテ大統領の参加が予定されていたのですが、翌日に議会での施政演説が行われるという慌ただしい状況の中で、参加は実現されませんでした(デュテルテ政権が行う強権的な薬物犯罪取締政策に対してはデュープロセスを侵害するものとして内外で厳しい批判があることも事実です)。
フィリピンと言えば、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで、たくさんの米軍基地があった国ですが、1987年にすべての国内の米軍基地の撤去を実現しました。アメリカとの友好関係は崩れていません。これは、日本にも参考になることです。
3 私は、会議終了後、ダバオ市よりさらに南のジェネラルサントス市に数日訪問し、先住民族の働くプランテーションなどを視察してきました。政治腐敗と内戦によるインフラ整備の遅れを主要な原因として、フィリピンに行って感じたことは、貧富の差が想像以上に大きく、これが大きく国の経済発展を阻害している要因となっているということです。日本でも今、格差社会化の進行が大きな問題となっていますが、貧困の撲滅が実は国の政治と治安の安定にとって極めて重要な要素であり、貧困がないこと(教育や医療、介護や福祉が心配なく受けられること)は、それ自体が「国の富」であることをつくづく感じました。我が国では、富が急速に失われているような気がしてなりません。
(フィリピンのチボリ族の子どもたちと)
以 上
(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2016年8月号掲載)