16-10-31 : となりの弁護士「民泊ブームと国際化」(弁護士 原 和良)

1 空前の民泊ブーム

今、世間では、「民泊」という言葉がブームとなっている。民泊事業とは、ホテル・旅館以外に、民間の住居を利用した宿泊事業である。ブームの背景には、外国人観光客の増加、東京オリンピックに向けた政府の観光政策、大都市圏を中心にしたホテル・宿泊所の不足とそれにともなう宿泊料金の高騰、などがある。また、人口減少と空き家対策・空家利用策の観点や、景気対策・マンション等の有効利用として副業ビジネスとしても注目されている。 このようなブームは、エアビーアンドビー(airbnb)等のWEBを通じたマッチングサイトの普及が大きな推進役になっている。

しかし、民泊事業は、現行法上は様々な規制があり、どう課題を解決するかが喫緊の課題となっている。

2 法的問題が山積、行政的整備が必要

(1)旅館業法との関係

一つは、1948年に制定された旅館業法の規制であり、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」については、都道府県知事の許可が必要で、無許可営業は、処罰の対象となる。公衆衛生や伝染病の予防のために規制が必要とされた立法当時とは、時代が変化しているため、このような規制の合憲性そのものが議論になる余地があり、民泊事業推進に向けては、今後適正な改正や特別立法がひつようとなる。

なお、現行法上は、旅館業法上の簡易宿泊所を利用しての営業許可が、簡易な営業手段として活用されており、20016年4月からは、客室面積の規制や玄関帳場(いわゆるチェックイン手続)について、大幅な緩和がされている。

(2)賃貸アパートや賃貸マンションでの民泊

民泊に限らず、近時、外国人の入居者とのトラブルやシェアハウス利用について問題になっている。民泊利用の際には、転貸借ではないか(又貸し)、事業目的利用としての用法違反が問題になってくる。アパートや一棟マンションのオーナーが民泊事業を始めるのであれば問題は少ないが、賃借人が民泊事業を始めるのはハードルが高いといえる。

(3)区分所有法とマンション管理規約

最近、相談が増えてきているのが、分譲マンションでの民泊をめぐるトラブルや民泊禁止を管理規約に新設したいという相談である。セキュリティの観点からも、見ず知らずの不特定多数の人々が共有財産であるマンションを利用することや住居専有部分を事業目的で利用することは、抵抗が強い。

3 国際化は大きな流れ

民泊をめぐっては、様々な議論があるが、国際化は大きな流れであり、私は、問題点をあぶり出し、新たなルールの策定の議論を深めるべきときだと思う。そのうえで一番大事なのは、民泊に限らず、非日本語・非日本文化の外国人を受容する心の国際化が鍵だと思う。居住外国人に対する溶解政策、管理規約や賃貸借契約、掲示板などの英語表記、ルールの共有化などが、民泊をめぐる議論の中で深まることを期待したい。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2016年10月号掲載)

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