3月31日、株式会社フジ・メディア・ホールディングス(FMH)及び株式会社フジテレビジョン(CX)に対する第三者委員会の調査結果が報告書として公開されました(要約版:https://www.fujitv.co.jp/company/news/250331_2.pdf)。
267ページにわたる大部の調査報告書ですが、日頃企業のパワハラ・セクハラ、横領等の不祥事に関わる私にとっては、対象会社のみならず、日本の企業・組織全体の在り方に関する共通の教訓となるべき重要な文書であると考え、全文を読み通しました。
今回の調査は、本件性暴力事件に至る経緯、事件発生後および事件報道後の対象2社による危機管理対応にとどまらず、
・不祥事の温床となった企業文化・企業風土
・類似事件の有無
・役職社員・一般社員の意識調査
・ガバナンス体制全般
といった広範囲なテーマにわたる分析が行われており、非常に興味深い内容でした。
対象2社が実施した社員等へのアンケートでは、根深い企業体質の問題が浮き彫りとなりました。
• 部長クラスの社員が、若手女性社員を“喜び組”と呼び、芸能プロダクションのトップ等との会合に『喜び組でも呼んどけ』と言っていた。
• 女性は男性の隣に座り、お酌をするのが仕事、それがスマートにできない女性は評価されない文化があり、人事権を持つ者には絶対服従しなければならない風潮がある。
• 会合への参加を拒否すると、役員が『席があると思うな』と発言した。
• 上司からボーナス査定に影響すると言われたため、不利益を被らないよう参加していた。
• 役員や上司等の同席者が守ってくれなかった、助けてくれなかった、セクハラを止めなかった、知らないふりをした、何もしなかった。
• 加害者が上司であり、周囲との人間関係悪化を避けるため、自分が我慢した。業務に支障が出ることを恐れた。
このような企業風土のもとで、事件は「起きるべくして起きた」と言えるでしょう。
報告書では、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」という国際スタンダードに基づき、企業が人権を有する人々(ライツホルダー)やその他の利害関係者(ステークホルダー)の視点から、企業の問題点を検討・検証しています。
報告書は、次のように結論付けています。
「これからの企業経営は、ライツホルダーの人権尊重と人的資本が一つの基軸となると思われる。
社員が人権侵害を受けても、声を上げ、救いを求めることができる職場、
みんなが前を向き、生き生きと能力を発揮できる働きやすい職場でなければ、
その会社に未来はないだろう。」
以上