25-07-31 : となりの弁護士「別荘地管理契約は解約できるか?」(弁護士 原 和良)

1 令和7年1月9日、あかざわ恒陽台という静岡県伊東市の別荘地に関する管理契約解除をめぐる6年間にわたる訴訟で、静岡地裁沼津支部はオーナー側の契約解除の主張を全面的に認める判決を出した(判例時報No.2622 76ページ以下)。
 管理会社側は東京高裁に控訴、5月13日に第1回口頭弁論が開かれ、それぞれ控訴理由書、反論書面を提出し、結審。7月1日に判決日が指定された。判決は、一審の判決を覆し、オーナー側全面敗訴の不当判決となった。

2 オーナー側は、一切の共益費用を払わないと駄々をこねているのではない。
 別荘地には、ルールが存在しない。民主主義が存在しない。そのことに異議を唱えているのである。
 管理会社が一方的に設定する管理費、サービスに対して、別荘地所有者は何の対抗手段を有さないということになる。管理会社としては、どんなに高い管理費を徴収しようと、どんなにずさんな管理サービスを提供しようとも、顧客を逃がすことはない。そこには、より良いサービスを廉価で提供して顧客の信頼をかちとり、契約を継続してもらおうとするモチベーションはなくなってしまう。
 その結果「悪貨が良貨を駆逐する」という市場の荒廃を招いているのが別荘管理費問題なのである。
 民法研究者の間では、改正民法により651条の委任契約の規定が改正され、管理契約の解除を制限することは法解釈としては困難という意見が多い(月報司法書士1月号44~52ページ「熊代拓馬論文」等)。また、令和4年12月にはハートランド事件判決という最高裁判決が確定し、管理契約の自動更新を定める管理規約は、消費者契約法10条違反で無効との判決が確定している。
  オーナーたちは、7月14日に最高裁に上告の手続を行った。

3 6月30日、最高裁第一小法廷は、管理契約を締結していない別荘地所有者(土地のみ所有)に対して、管理費相当額の不当利得返還義務を認めた。その理由とするところは、別荘地には管理が必要であり、不当利得を認めないと管理費を負担している契約者との不平等が生じるというフリーライド論である。
 一般論としては、認める余地がないわけではない。しかし、何が不当利得なのか、その金額がいくらが相当なのかは、各別荘地によって様々である。
 上記最高裁判例は、管理契約解除を否定する理由とはならない。

4 今、全国の別荘地では売却したくても値段がつかない、他方で高額の引き取り費用で土地所有権を引き取るという「負不動産」ビジネスが横行している。
 全国で多くの市民が、「負動産」の処理に困っている。最高裁には、実態を踏まえた判断をしてもらいたいし、ルールなき別荘地管理の現状に立法・行政はその対策に取り組むべき時代に入っている。

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