人間は、社会的存在である。働くことの本質は、人間が社会的人格としてのアイデンティティーを他者から承認されることにある。平たく言えば、他人(社会)に「当てにされている」との実感を得るために働くのである。
弁護士という職業も「当てにされている」「社会に役に立っている」という社会的承認に働きがいがあるという点では例外ではない。やった仕事の金銭的報酬が多ければ多いに越したことはないが、自分は人の「役に立った」という社会的承認を受けたときに、なんともいいようのない快感を感じる。
企業経営の原点もそこにあるのではないだろうか。企業は社会から当てにされ続けなければ存在できない。経営がうまくいっていない時は必ず社会の「当て」=ニーズと自分の経営との間にズレがあるが自分ではなかなか気がつかない。どんな優れた経営者とて万能ではない。ズレを指摘してくれる友を持つことが大事である。
(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2003.5掲載)