15-03-31 : となりの弁護士「美濃加茂市長の無罪判決をどう読むか?」(弁護士原 和良)

1 全国最年少市長として取り沙汰された藤井浩人市長が、収賄罪で起訴された事件の判決が、3月5日名古屋地方裁判所で言い渡された。結果は無罪。有罪率99%といわれる日本の刑事裁判において、これだけの有名な事件が無罪となることは希有なことである。

藤井市長は、判決後の記者会見で、警察の取り調べ捜査のあり方を強く批判した。「こんなはなたれ小僧を選んだ美濃加茂市民の気が知れない。」「美濃加茂市を焼け野原にしてやる。」有罪の色眼鏡で、精神的に追い込んでいく取り調べの問題点は昔から指摘されており、虚偽自白の温床となっている。

検察は、この無罪判決に対し、名古屋高等裁判所に控訴を行った。

2 数年前障害者郵便制度悪用事件虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された村木厚子厚生労働省労働局長の事件では、検察官によるフローピーディスクの改ざん(証拠偽造)が発覚、2010年9月、大阪地裁は無罪を言い渡した。

ここでも、問題となったのは、前近代的な捜査のあり方と検察改革であった。相次ぐ検察不祥事や冤罪事件を受けて、日本の刑事司法制度を冤罪を出さないようなものに改革するため議論をするために設置された法務省の法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」では、結局、捜査過程の全面可視化は先送りになり、その反対に、盗聴捜査の拡大、司法取引の合法化など、改革とは逆行する制度改革が進められようとしている。本末転倒とはこのことである。

現在、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」という形で、今国会で法案審議にかけられようとしているが、マスコミの報道も少なく、国民が知らない間に、改悪が進められようとしている。

3 市長ですら冤罪の犠牲になるのであるから、自分は刑事司法とは関係ないとは言っていられない問題でだと思う。専門的すぎて、よくわからないという声もあるだろう。

でも、すべての法律は、自分たちが選挙で選んだ国会議員が、国民の代表として決めたものである。集団的自衛権、原発推進政策、増税政策、すべては議会制民主主義のもとでの「民意」として決まっていく。

これでいいのだろうか、という疑問を常にもって監視をしたいと思う。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2015年3月号掲載)

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