1 私を含め中高年世代の多くは、中学校入学と同時に生まれて初めて英語に出会った。This is a pen.と並んで最初に学ぶ英語の挨拶は、Good morning.という慣用句である。
何回も練習させられた。私にとって約35年前の体験である。
2 九州の片田舎で育ち、外国人も見たこともない私にとって、Good morning.は、新鮮でかつ違和感のある言葉だった。日本語では「おはようございます。」である。でも、「おはようございます。」とは、一日の早い時間(午前)=客観的状態を表す言葉である。他方、Good morning.とは、「いい朝ですね」(あるいは「いい朝になるように」)という話し手や相手の主観的気分や願望を表す言葉である。
へそ曲がりの私は、Good morning.という問いかけに対して、Good morning.と挨拶を返さなければならないのか不思議でたまらなかった。
3 人生いろいろ、毎朝の気分もいろいろである。嫌なことがあった翌朝や今日はしんどいスケジュールがある日は、「Bad morning.」と回答すべきではないか、英米人は頭がおかしいと思っていた。
こんな違和感から始まって、英語の世界に何故かのめり込んだ学生時代だった。塾もない田舎で、毎日ラジオ講座で必死で英語を勉強した。今でも英語が大好きである。
4 社会人となって、経営者となって、今、いろいろな壁にぶつかる中で、何故「Good morning」なのか、その謎が半分分かってきたような気がする。
挨拶とは人と人が交わる最初の入り口である。コミュニケーションの入り口である。では、コミュニケーションとは何のためにあるのか。
.コミュニケーションの目的は、相手を気分よくさせること、気持ちよくさせることである。そして、不安の壁を取り除くことである。だから、どんなに不愉快でも気持ちを込めて「Good morning.」なのだ。
5 気分がよくないとき、物事がうまくいかないときは、ついつい目の前の人に当たりたくなる。しかし、まずは相手を気持ちよくさせること、もし、相手に変わってほしいと思うときは、思い存分気持ちよくなった後に、控え目に指摘してあげたらよい。自分で気づくヒントを与えるだけでよい。
人は自ら変わろうと思わない限り、変わらないものだ。
先週は、南相馬市の被災現地の仮設住宅、避難所を周り原発補償のセミナーと個別相談を行ったが、被災地でもやはり朝の挨拶は、「Good Morning」である。
以 上
(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2011年8月号掲載)