07-12-01 : となりの弁護士「倒 産」(弁護士原 和良) 

1 年の瀬も迫り今年も残りわずかとなったが、2月の開設から10ヶ月が過ぎた当事務所は仕事が絶えることなく、『あの仕事はまだか』と苦情を言われながら忙しく今年を終えようとしている。
年末になると必ず相談が増えるのが企業の倒産事件である。経営危機に陥ったときの対応を見ていると、経営者には当然のことながら様々なタイプがいる。5千万円の銀行借入で思いつめ残念ながら自殺に追い込まれた社長もいれば、50億の返済に行き詰っても笑顔を絶やさない(?)社長もいる。
世間で大問題になった高金利問題は、貸金業規正法や出資法が改正された。いわゆる灰色金利を利用した商売が成り立たなくなった消費者金融は経営に苦労しているようだ。まじめに10年間消費者金融の返済を続けてきたある事業者の「債務整理」を行なったところ、10年間払い続けた違法金利は約1千万円に上った。これまで矢の催促を行なってきた消費者金融業者に今返還の催促をしている。

2 作家の江上剛氏が言っていたが、「金脈よりも人脈」が大事だそうだ。お金というフィクションは、一時的には人を豊かにするが、なくなるときはあっという間である。この仕事をしていると、請求する側にとって、お金がない人ほど強い人はない。ない人からは回収できないのである。お金がなくても、頼れる人脈があれば苦しいときをしのぐことができる。人が第一でお金は二の次という生き方を貫いていたほうがリスクに強いのである。そう考えると、お金に行き詰っても命まで落とす必要はないのだが…と考えてしまう。

3 本来、人間が豊かになるために発明されたのが貨幣であったはずであるが、今や、私たちの日々の生活そのものがお金に支配され、時には健康や命までも落としてしまう。また、本来人間が幸せになるために発明された道具が会社であったのに、会社が人間を支配し、会社が健康や命を奪う道具になってしまった。
英語の名言に、“お金がないことが苦にならないのは、若いしるし”というのがある。逆に、お金を持っていることしか自慢できることがないのは、年取った証拠だそうだ。会社を維持していくには利益を常に出さなければならない。しかし、利益を出すことが自己目的化してはいけない。最近の企業の不祥事は、目的と手段を履き違えた結果であることが共通項であるようだ。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士2007.12掲載)

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