05-05-01 : ひとこと言わせて頂けば「国民総幸福量(GNP)」(弁護士原 和良)

20年一昔。日本は、確実に新しい時代に入ろうとしている。問題は、どういう新しい時代をつくるかであろうが、永田町の国会議員のみなさんは、国民に魅力的な新しい時代のビジョンを示しているとは思えない。戦後日本の幸福尺度は、経済成長と経済力であるとの暗黙の了解があった。しかし、この発想そのものが本当に正しかったのか、その検証を求める議論が最近目立つ。

先月の朝日新聞の連載「幸せ大国をめざして」の中で、アメリカに次ぎ世界第2位の国内総生産(GDP)を誇る日本は、GDPや平均寿命、教育水準などをもとに判断する国連開発計画の「人間の豊かさ指数」では昨年第9位、電通総研など各国研究機関が実施する「世界価値観調査(00年)では「自分が幸せと思う人」の比率は世界第29位で、ベトナムやフィリピンよりも下位だったという。

ヒマラヤ山麓の人口70万の小国ブータンでは、GDPではなく、GNP(国民総幸福量)を指標として、国家が豊かな国づくりに取り組んでいるという。経済的な豊かさだけでなく、環境保護や伝統文化の維持発展などを国家の目標とし、いわば「オレ流」の国づくりだ。目先の経済合理性や「自由」競争至上主義をモットーとするアメリカ型のグローバリズム、これに引き離されまいと必死でグローバル化を受け入れようとする日本の支配層の思考方法とは対局にある。

「道路をつくれば便利になるが、森林は破壊され文化や環境も破壊される」「環境や文化、家族や地域共同体のきずなまでも破壊するような経済成長は人間を幸福にしない」「お金を払いペットボトルでおいしい水を手に入れる社会と、川や泉の自然の水を安心して飲める社会とどちらが豊かか」…このような発想は、ものは溢れているが、家族でゆっくりくつろぐ時間もないほどの長時間労働にどっぷりつかり、リストラや人間関係のストレスから病気にならざるを得ない我々日本人にあらためて幸せとは何かを考えさせてくれる。

ブータンは1人あたりの国民取得が600ドル弱で日本の50分の1以下である。決して経済的に豊かな国ではない。このあたりにもう一つの新しい日本の選択肢が隠されているような気がしてならない。

以 上

(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2005.5掲載)

Menu