18-11-14 : となりの弁護士「カマスとサーカスの象」(弁護士 原 和良)

1 最近経営理論の勉強をしている中で、おもしろい話を聞いた。経営者の中には、知っている方も多いカマス(魚)の話である。
カマスたちがいる水槽の中に、透明なガラスを入れ餌とカマスとの間を遮断する実験をする。カマスたちは、透明なガラスに気が付かず、何度も体当たりして餌にありつこうとするが、ガラスにさえぎられて餌にはありつけない。
そのうち、あきらめてしまって、ガラスへの体当たりをやめてしまう。その後、透明なガラスを外して餌を水槽に入れても、ガラスの痛い目にあったカマスたちは、餌を食べに行こうとはしない。

 

2 このカマスたちの行動を変えるにはどうしたらいいのか。
答えは、簡単である。外から他のカマスを水槽の中に入れてあげることだ。ガラスの失敗経験のない新参者のカマスは、餌をまくと、すいすいと泳いで餌を食べに行く。
ああ、食べに行けるんだ!もともと水槽にいたカマスは、新参者のカマスの姿を見て、固定観念に凝り固まっていた自分たちに気が付き、餌を食べにいく。
組織は、常に新しいものを受け入れていなければ、知らず知らずのうちにルーティンに慣れてしまい、新しいチャレンジやものの見方を忘れてしまいがちであるということを説明するためによく使われるたとえ話である。

 

3 似たような話であるが、組織ではなく個人のチャレンジによく使われる話が、サーカスの象の話である。
サーカスの象は、子どものときに足に鎖をつながれて逃げ出さないようにされている。子どもの像は、何度も鎖を引きちぎろうともがき続けるがそのうちに自分にはそんな力はない、とあきらめてしまう。
やがて、像は巨大な大人の象にたくましく成長して、足の鎖など一蹴りで引きちぎってしまう力をつけているのだが、過去の失敗経験は、どうせ自分にはそんな力はないし無理とチャレンジすることすらあきらめてしまう。

 

4 われわれは、過去の自分の失敗や挫折、周囲からのネガティブな言葉から、今の自分には無理と自分を過小評価しがちである。自分を納得させるために、自分には能力がないから、お金がないから、今は忙しいから、と夢をあきらめる理由を並べがちである。
しかし、多くの場合、客観的に限界があるのではなく、自分の限界を自分自身で決めてしまっていることが多いのである。

以上

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