20-03-31 : となりの弁護士「Wait A Few Years」(弁護士 原 和良)

1 この1,2か月の私たち庶民の最大の関心事は、紛れもなく新型コロナウィルスの感染状況だ。A県で、新たに感染者が発生した、B県で感染者が死亡した。センセーショナルなメディアの報道に一喜一憂し、震撼させられる日々である。

ウィルスに感染して、死亡した方々には哀悼の意、また入院中の方々、自宅待機を含めて療養中の方々には心からお見舞いを申し上げたい。

見えない恐怖の下で、マスクの買い占めや転売、また何の関係もないトイレットペーパーの買い占めまで、世間は一部パニック状態にある。

人々の恐怖心は、敵が見えないこと、そのことによりこの非日常的な「厳戒態勢」がいつまで続くのか、という先の見通しのなさに起因する。そして、日本の場合、何の確たる補償もないままに、お上からの「自粛」「自粛」の要請が続くと、中小企業や自営業者は瞬く間に経済的窮地に陥ってしまうし、そこで働く労働者も不安でいっぱいになってしまう。

 

2 その一方で、私は、もう少し長い目で見た時に、私はこのパンデミックによるパニックから次の進むべき将来を展望してみたいと思う。

報道によると、中国の工場の閉鎖・生産活動の停止により中国の大気汚染は劇的に改善されて青空が広がっているという。イタリアのベネチアでは、同じく観光客の激減により大気汚染が改善され運河の水は透き通り、イルカや魚が戻ってきたという。日本においては、テレワークが広がり、不要不急の残業と接待、宴会がなくなった。もちろん観光業界や飲食業界には大きな打撃であり、その対策は喫緊の課題であることは否定しない。

また、「不要不急」とはいかにもあいまいな概念であり、お上からお前が日々やっていることは「不要不急」と言われるとあんたに言われる筋合いはない、とも思いたくなる。そもそも「要」「急」とは、個人の人生観・価値観そのものであり、上から押し付けられるものではない。

とはいいながら、当面は、密集・密閉・密接を避けながら、互いに協力して感染の拡大を避けるしかない。

 

3 他方、私は、このパンデミックを、これまでの日常を見直す契機とすることも大事だと考える。

パンデミックは、人類が如何に、この地球と自然を痛めつけながら、また自分の身体と精神をむしばみながら、経済成長とより高い収入を追い求める負のワープにはまり込んでいたかを教えてくれるきっかけにもなっている。

パンデミックは、いずれ1,2年後には克服される可能性が高い。それまでは、とにかく国家や地方自治体はそれぞれの国民の命と生活を守ることが使命となる。企業は、その社員と家族の雇用と生活を守ることが使命となる。

かならず、パンデミックは、いつかは底を打ち、新たな経済活動が再開するのであるから。それまでは、支えあって乗り切ろう。

 

4 私たちが、今考えなければならないのは、その先の地球と日本の将来である。地球温暖化は避けては通れない人類の共通課題であり、このままの経済活動を続ければ2100年には、日本は人間が住めない列島になるという。南海トラフ地震は30年以内に70-80%の確率で日本にマグネチュード8レベルの大地震を引き起こすという。その時、原発はどうなるのか。

今回のパンデミックは、安ければいいという経済法則にもとづいて、海外に生産拠点を移転してきた日本の経済政策も問われている。輸入に頼る農業政策、食糧自給問題も同様である。

ITによるテレワークは大いに結構だが、この国のあり方は本当にこれでよいのか、を冷静に考える契機にしたい。

 

5 英語では、「少々お待ちください」というときに「Wait a few minutes 」という表現がある。今、私は、「Wait a few years」と言いたい。せこせこと、数分後のことを案じるよりも、数年単位でこの地球をどうするのか、人類は考えるべきである。

 

以上

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