24-07-30 : となりの弁護士「高齢者を狙った投資詐欺」(弁護士 原 和良)

1 以前、SNS(インターネットを利用した連絡手段)を通じた著名人なりすまし詐欺のコラムを書いた。
  他方で、小金持ちの高齢者を狙った投資詐欺も東京都内で増えているようで、最近相談を受けたのは、「インドネシアの通貨ルピアが1000倍に高騰する」「ベトナムの通貨ドンが500倍に高騰する」と言われ、多額の購入資金をだまし取られたというケースの相談である。
2 SNS詐欺とは違い、家族から孤立した高齢者をターゲットとした対面型の詐欺であるが、多くの場合、本人は騙されているという自覚がなく、家族の忠告に反発し聞く耳を持たないケースが多い。
3 勧誘者は、FX(海外為替証拠金取引)のトレーダーの資格を持っていない。FX取引を行うには、金融商品取引法により金融商品取引業の登録が必要だ。FX取引は、個人でもできるが、他人の資金を預かってFX取引を行うには業者登録が必須とされている。
  対面詐欺の場合は、登録もないのに、ルピアやドンが高騰するから私にお金を預ければ何十倍、何百倍にも増えると夢のような話をして投資資金を預かる。
  しかし、多くの場合、投資などしていない。
  そんなに儲かるのであれば、勧誘者本人が投資し、多額の利益を得て巨額の富を得て裕福な暮らしをしているはずなのに、本人はお金がなく「かつかつ」の生活をしていることに気づけばすぐにその嘘は見抜けるはずである。
4 自分だけは騙されていないという自信があるのであれば、身近な弁護士に相談して判断してもらえばよい。本当に、確実に儲かる話であれば私も投資する(笑)。
  でも、この世の中、確実に儲かる話など存在しないのである。富を築いた人々は、必ずリスクを取りそのリスクを努力して克服して成果をあげている。ノーリスクハイリターンはこの世の中には存在しないのである。
5 日本では高齢化社会が進行し、高齢者の財産を狙った多種多様な詐欺が次から次へと出現する。個人が孤立するなかで、インターネットを通じた仮装現実社会と現実社会との境目が曖昧になりつつある。自分の目で確かめなくとも財の移動、取引が進行していく。ネット社会の進展により私たちの生活はより快適で便利なものになったのは確かである。
  しかし、その快適さや便利さに便乗して個人の財産を脅かす恐怖も増大している。
  最後に頼りになるのは、自分自身である。そして自分自身を信じるのであれば、自分を本当に支えてくれた家族や親友にありのままを一度は相談してみることが、自分を守る最良の方法である。

以上

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