25-01-30 : となりの弁護士「別荘地の管理契約は解除できる」(弁護士 原 和良)

1 高度経済成長期に開発分譲されたリゾート別荘地。昔はプールやテニスコート、華やかなレストランが併設され、少し経済的に余裕のある人々は、大自然の中での安らぎを求めて、高額な別荘地を確保し、アーバンライフを楽しんだ。しかし、リゾート開発と分譲地の管理はバブル崩壊を機に崩壊し、不動産としての市場価値は皆無に等しい。めぼしいサービスもないのに、毎月管理会社から高額な管理費だけが請求され、手放したくても買い手がつかないという状況が全国に広がっている。また、別荘地に常住して生活を営む者から見れば、普通の住宅地に住んでいるのと生活実態は変わらず、管理費を支払うメリットがない、という悩みも深い。

2 管理会社と締結した別荘地の管理契約は、解約できないのか?ほとんどの別荘地は、購入時に別荘地を独占的に管理する管理会社と管理契約を事実上強制的に締結させられるが、サービスの内容は抽象的でその対価に合理性があるのか検証のしようがない。法形式上は、管理会社と分譲地・建物所有者との個別の契約とされ、マンションのような区分所有法による区分所有者の権利義務に関する規律やマンション適正化法などによる業者への規制もない。

このため、別荘地の管理契約は、管理会社にだけ権利があって契約当事者である分譲地・建物所有者には、管理費支払いの義務だけが課され、管理状況を監督したり、管理費や管理内容を是正したりする方策が何ら保障されていないのが現状である。

管理規約上は、他人に別荘地を譲渡すれば管理契約は自動的に新所有者に引き継がれ、相続が発生しても相続人は管理契約も一緒に相続することになっており、孫子の代まで管理費の負担を背負い続けなければならなくなっている。

3 奴隷制度のような別荘地管理契約を解約できないのはおかしい、との思いで争ってきた裁判で、今月管理契約の解除は有効という画期的な判決が出た(1月9日 静岡地方裁判所沼津支部判決)。

判決は、別荘地の管理契約は民法上の(準)委任契約の適用があると判断し、例外的に(準)委任契約が受任者(管理会社)の利益をも目的とする契約である場合は解除権が制限されるとするが、本件の管理契約は管理会社がサービスの対価を得るという単なる経済取引に過ぎず受任者の利益をも目的とする契約ではなく、解除権は制約されない、と明確に判じた。さらに、解除権が認められるやむを得ない事情、解除権を放棄したとは解されない特段の事情についても認め、分譲地所有者の主張をすべて受け入れる会心の判決内容となっている。

4 今後、東京高裁での控訴審が予想されるが、①別荘地の管理契約の呪縛に悩まされている別荘地所有者、②管理契約が障害となって相続土地国庫帰属制度の活用ができない別荘地相続者、にとっては明るい裁判例となる。

また、別荘地の管理をめぐっては根本的には立法政策的な解決や国によるガイドラインの策定が望まれるところであるが、少なくとも解除権が認められて初めて管理会社と分譲地所有者は対等の立場で管理内容についての交渉の席に立てるようになるといえるだろう。

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