18-03-11 : となりの弁護士「『二枚舌』は許されない」(弁護士 原 和良)

1 この2月、巷では、ピョンチャン冬季オリンピックでの、アスリートたちの素晴らしい演技に沸いている。今回の大会は、緊張を増す朝鮮半島でのオリンピック開催ということで話題になったし、北朝鮮から金正恩の特使として派遣された妹金与正にも大きな注目が集まった。

2 こんな中、東京高等裁判所である判決が出た。一部マスコミで報道されたが、とても重要な判決であるのに、オリンピックにかき消されてしまったような状況だ。
1月31日付の命令服従義務不存在確認請求控訴事件という事件の判決である。これは、現役の自衛隊自衛官が、平和安全法制整備法による改正自衛隊法76条1項2号による出動命令が、憲法に違反しており、出動命令を受けた場合に違憲の法律に基づく命令には従う義務がない、という確認を求めた裁判である。
いうまでもなく、平和安全法制整備法の成立・施行により、これまでは、「我が国に対する武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」に対して自衛隊の出動命令が認められていたところ、これに加え、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)にも出動命令がなされることになった。
一審の東京地裁判決は、「出動命令が出る具体的な可能性はない」と判断し、訴えの利益がないと実質審理には入らず却下の門前払い判決を下した。東京高裁判決は、この門前払いの却下判決を取り消し、東京地裁に事件を差し戻し、審理のやり直しを命じたものである。

3 早速判決文を取り寄せて読んでみた。注目したいのは、この裁判で、被告国がどのような反論主張をしているかである。国は、驚くことにこの裁判で、一貫して「存立危機事態というのは、具体的には想定しえない」と反論している。国の裁判での主張は、首相の国会での答弁と同じくらい重みのあるものであり、国民への説明責任があるはずである。存立危機事態が想定しえないものであるのであれば、なぜ平和安全法制整備法をつくる必要があったのか。何故、アメリカと一緒になって朝鮮半島の危機をあおり、アメリカから多額で大量の兵器の購入をする必要があるのか。もっと言えば、存立危機事態が想定しえないのに、なぜ憲法9条を改正する必要があるのか。
国が国民に隠れてこんな馬鹿げた裁判をしていることをもっと知らせるべきである。

以上

Menu