1 昨年、民法の一部を改正する法律及び関係整備法が可決し、2017年6月2日に公布されました(施行は、2020年4月1日)。
今回の改正での中で、私たちの生活に直接重要な影響を及ぼす改正の一つが、法定利率・遅延損害金に関する改正です。
現在の民法は、民事法定利率を5%と定めています(民法第404条)。契約書で利息についての約束をしていないときや、交通事故や傷害事件などの不法行為で損害賠償義務は生じたときなどは、本来の支払時期から支払われるまで年5%の遅延損害金(利息)が発生します。
2 法定利率変動制の採用
今回の改正民法では、5%の法定利率を廃止し、変動利率を採用することになりました。すなわち、①別段の意思表示がないときは、利率は当該利息が生じた最初の時点における法定利率とする、②法定利率は3%とする、③3%の法定利率は、3年ごとに変更する、というものです(改正民法404条参照)。
また、商法の法定利率の規定(商法第514条=6%)は削除廃止されました。
既に支払いが滞っている場合にお金を支払う立場には有利な規定ですが、逆にお金を請求する立場には不利な変更といえるでしょう。しかし、将来にわたって受け取ることのできる権利を現在一括して前払いで受け取るという場合には、法定利率の事実上の引き下げは反対に作用します。それが、中間利息の控除の問題です。
3 中間利息の控除
改正民法では、将来の利益や将来負担すべき費用について損害賠償額を決める場合には、中間利息を控除することが明記されました(改正民法第417条の2参照)。
これを、交通事故の事例で説明します。年収600万円の35歳の一人暮らしの男性が、交通事故で死亡したと仮定します。生活費控除率を50%(得られたであろう収入から生活維持のための必要経費を50%とみなす)、労働能力喪失期間を32年(67歳まで働けるとみなす)とした場合、受け取る損害賠償額は現行民法と改正民法で大きく違ってきます。32年分を一括でもらうことになるので、利息を控除して現在価値に引き直しますが、その場合にはライプニッツ係数という計算式を使います
(http://www.fsa.go.jp/news/newsj/13/hoken/f-20011115-1b.pdf 金融庁ホームページより)。
(1)現行民法(5%)での賠償額
=600万円×(1-0.5)×15.8027=4740万8100円
(2)改正民法(3%の場合)での賠償額
=600万円×(1-0.5)×20.3888=6116万6400円
(3)差額=1375万8300円
4 そもそも、人の命をお金に換算すること自体、違和感があるのですがそれでも、失われた命は取り返すことができない以上、お金で賠償してもらうほかありません。
利息の規定が変更になるだけで、これだけ私たちの実務やみなさんの生活に大きな影響が出るのです。
以 上