20-11-30 : となりの弁護士「コロナ第三波に思う」(弁護士 原 和良)

1 東京の新型コロナの感染者数が、東京では今日(11月19日)、500名を超えて過去最高を更新した。政府も東京都も、抜本的コロナ対策を打ち出していないため、この数字は日増しに増えて増え続けるであろう。ゆでガエルという言葉があるが、今日本は、いろいろな意味でゆでガエルの状態にあるといつも思う。

2 人は、長年の習慣を、そう簡単には習慣を変えられない。コロナ感染は、自分や家族等自分の身近な人が感染して苦しまない限り、「自分には関係ない世界の出来事」とやり過ごしてしまう。

私の身近では幸い感染者は出ていないが、依頼者の中にはほぼ無症状で新型コロナ陽性となり、ホテルで2週間隔離された人がいる。まだ、40歳台の健康な専業主婦で、感染経路は全く不明だという。無事陰性に戻ったが、手の震えなどの後遺症に復帰後も何カ月も悩まされているという。

その意味で、高齢者ではないから、若いから感染しても大丈夫というのは危険だ。このような後遺症に悩む感染者の追跡調査は私の知る限り、なされていない。重症者の数、医療機関の受け入れ態勢がコントロールされていれば何の問題もないというのは実態を見ていないと言わざるを得ない。

3 確かに、冷え切った経済のテコ入れは必要である。Go To キャンペーンでの観光業や飲食業の救済政策について、それ自体は否定しない。しかし、旅行や外食に行く余裕すらない低所得層への配慮はほとんど手当てがなされていない。この数か月自殺者が増え、その多くは非正規雇用の女性労働者ではないか、と言われている。

4 ドイツの哲学者ニーチェは、「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。」と言った。人は、客観的な事実を突きつけられても、その事実をそのまま受け入れることはできない。自分の立場や価値観、利害関係から違う解釈をする。そして、その解釈態度は、やがて無意識の習慣となり解釈したものが事実と勘違いをしてしまう。

人間には、自己防衛本能があるため、事実は違うのではないか、あなたの考えは間違っている、と言われると自己防衛反応が働き、自分の解釈を事実に反して守ろうとしてしまう。

和を重んじるという日本人の精神構造は一つの美徳ではあるが、それは時の多数派に身を委ねてしまい、そこから物事を批判的にとらえることを思考停止してしまう、少数者として不利益を被るよりも多数派に常に追随してよしとする、この習慣はなかなか変えられない壁である。

以上

 

Menu