1 2020年の春からの新型コロナ感染拡大による社会経済への影響は計り知れない。中小企業の倒産・破産が激増するのではないか、と危惧をしていたが、ふたを開けてみれば、2021年の倒産件数は、前年比23%減の6015件で、1966年に次いで過去3番目に少ないという(帝国データバンク)。
何故、このような現象となったのか。一つは、2020年3月にはじまった、ゼロゼロ融資(無利子・無担保融資)による支援である。その額は、約40兆円に上る。
更には、持続化給付金やコロナ休業支援金、都道府県を通じた時短営業協力金、などが中小企業・事業者の生業を下支えした。
2 コロナ禍前の中小企業が、順風満帆だったわけではない。少子高齢化と地域経済の空洞化が続く中で、経営者の高齢化が進み、70歳を超えても後継者が見つかっていない企業は過半数を超え、泣く泣く黒字廃業を余儀なくされ、地域経済を更に沈滞させる悪循環にあった。
企業数の99.7%、雇用者数の68%を占める中小企業は、日本と地域経済を支える屋台骨である。しかし、しばしば大企業との格差-労働生産性、付加価値率、労働時間・賃金・福利厚生をはじめとした劣悪な労働環境、IT化の遅れ、など-が長らく指摘され、その改善が喫緊の課題となっており、政府もその改善を後押ししていた。しかし、コロナ禍突入は、これらの課題への取り組みを一気に後景に押しやってしまった。
3 さて、これからの中小企業はどうなっていくのだろうか。心配は、ゼロゼロ融資の返済が始まる今年4月以降の返済問題である。返せるあてがあっての借入ではない企業も相当数に上る。4月以降、中小企業の破たんが危惧されている。
日本における事業の廃止という観点で状況を見た場合、実際上は、倒産・破産という債務超過を理由とした中小企業・事業者の事業廃止より、休廃業・解散という事業の廃止がはるかに多い。
2021年の休廃業・解散は、5万4709件で、そのうち56.2%が当期純利益で黒字の事業者、62%が、資産が負債を上回る状態での休廃業・解散、であったという。ハッピーリタイアのようにも思えるが、地域からは活気が消えてしまい、そこで働いていた人々の雇用は奪われる。その意味で、中小企業・事業者の事業撤退は、その地域の経済にとって死活問題なのである。
4 コロナ禍不況に追い打ちをかけるように、ロシアによるウクライナ進攻が始まった。資材や食物の大半を海外からの輸入に頼る日本経済は、コロナ禍に加え、今世界平和の危機の中で、原油の高騰も加わり、原材料・食物の値上がりと物流コストの上昇に直面し、危機に立たされている。
以上