1 中高校生の将来の夢に関して常に上位に上がってくるのが公務員である。公務員は、国家公務員にしろ地方公務員にしろ、国民のため地域住民のために献身的に仕事をするという公僕とも称されるりっぱな仕事であろう。
一昔前に、コピーライターである糸井重里氏の「サラリーマンという職業はありません」というコピーが一世を風靡したことを思い出す。
その意味では、「公務員という職業はありません」ともいえる。
公務員というのは、国や地方自治体が雇用主であるというに過ぎず、その中身としては一般事務職もあれば、国立(独立行政法人)病院の医師・看護師、研究職、小中高の教師も大学教授も(準)公務員に他ならない。
2 公務員志向が増えているのは、先行きの見えない日本の将来への不安を反映していると言えよう。
民間企業は、不況の影響を受けやすく就職した企業が倒産したり、経済的苦境に立たされるとたちまち生活に影響する。公務員ならば国や地方自治体がつぶれることはない、という考え方が背景にはあるようだ。
3 やる気と能力のある若者たちが、公務員になり国や地域社会の活性化と繁栄に力を尽くしてくれるのであればそれは大歓迎である。
しかし、楽で安定した仕事という安易な考えでは務まらない。どんな職業であっても、困難とリスクはつきものであり、自分への適性をよく考えて選択した方がよい。
4 最近、元通産省の官僚であった古賀茂明さんが、『分断と凋落の日本』(日刊現代)を出版された。日本では時代の変化に対応する改革が進まず、アベノミクスの失政の中で、生活水準は韓国に抜かれ、半導体やIT、電気自動車などの最先端技術は世界から取り残されている。先進国の中で、唯一20年間賃金が上がっていないのが日本であることに警鐘をならす。
5 コロナ禍が一段落して、日本の観光地には多くの外国人が押し寄せている。地域経済には景気回復の一助になっている。しかし、反面喜んでばかりはいられない。円安の影響もあるが、先進国から中進国に脱落しつつある日本は「安い国」という経済的背景があることを忘れてはならない。グローバル社会においては、経済取引は日本一国にとどまっているわけにはいかない、多くの若者がどんどん外国留学をして多様性を身に着けることが将来の日本の成長の投資にもつながる。しかし、外国に進出したり留学したりするには今まで以上のお金がかかるようになっているのが、今の日本経済の凋落の結果でもある。
貧富の格差が拡大し、将来の見通しがつかない状況の中で、思い切った改革が必要とされている。
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