1 絶対迷惑をかけないから、と親族や親友に頼まれてなった連帯保証人。しかし、世の中には絶対はない。債権者は、借りた本人が返せないときに備えて、本人が返済できないときには代わりに返済をしますという約束を連帯保証人と締結する(保証人には、連帯保証と通常の保証があるが、通常の保証は、本人に支払い能力があるときはまず本人に請求せよ、本人が無一文になってから自分に請求に来いという権利があるが、連帯保証人は理由のいかんに関わらず、本人が支払わない場合は支払を拒絶できないという極めて重い責任がある)。
連帯保証は、貸主との契約である。絶対に迷惑をかけないという債務者との約束は、貸主には通用しないのはおわかりだろう。貸主に自分は騙されたといくら言っても取り合ってくれない。
だから、よっぽどのことがない限り安易に連帯保証人を引き受けるべきではない。自分が最後は返済する覚悟が必要である。
2 処理がやっかいなのは、相続に絡む連帯保証問題である。夫がそれなりの資産を残して他界した。妻と子どもたちがその遺産を相続する。しかし、夫は友人のために5000万円の銀行借り入れの連帯保証人となっていた。夫は家族に黙って連帯保証をしていたから、相続時に誰もそんな連帯保証債務が存在するとは知らなかった。債務者である友人も、当時は商売も順調で毎月遅れることなく返済を続けていたから銀行から何の連絡も来ない。ところが、夫死亡後3年たって、友人の商売が行き詰まり返済が不能になった。銀行は、連帯保証人の相続人らへ返済を要求してくる。
このような場合、最高裁の判例では、相続の開始を知ってから3カ月以内という相続放棄の規定(民法第915条)を拡大解釈して、3カ月を経ても債務の存在を知らなかったときは相続放棄を認めてあげることにより救済を図ろうとしている。しかし、放棄をすると相続したプラス財産も清算しないといけない。現実には、相続した家に居住していたり、預貯金を使ってしまっていたり、また事業として承継していたりすると、そんなに簡単に相続時への巻き戻しはできないのである。
相続時に連帯保証債務が存在することをわかっていれば、覚悟もできたであろうし、やりようもあったであろう。一昔前は、貸しての金融機関も事情を理解しある程度現実的な話し合いができたが、金融機関には今そんな余裕もなく、容赦なく取り立てがなされる。
3 信用力の弱い中小企業の場合、必ず融資には社長個人の連帯保証や自宅等の不動産の担保が要求される。無担保の融資の拡充、連帯保証人の責任の軽減、相続人の連帯保証債務の相続についての責任軽減など、これらの問題は、国の政策として立法的解決を期待したいところである。
以 上
(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2010年9月号掲載)