03-11-01 : ひとこと言わせて頂けば「金融再編・不良債権処理と銀行マン」(弁護士原 和良) 

最近、企業や個人の負債処理で感じることは、金融機関の従業員の志気とモラルの低下だ。

 あるメガバンクの不良債権処理。6ヶ月も前から不動産の任意売却の提案をしているのに一向に話が進まない。支店の再編リストラの中で担当者がころころ代わり、後任がきまらないというのだ。やっと決まった後任者と損切り売却で話がついたが、決済の日に立ち会えないという。同僚が次々と退職し、一人で300件の不良債権処理の仕事を押しつけられているという。もう2ヶ月も休んでいないと話してくれた。うつ病の一歩手前だ。交渉の最中に人が変わったように怒鳴りだし、部下に抱えられるように退室していった大手金融機関の支店長もいた。この銀行には精神的におかしくなった従業員を集めて外部接触のない仕事をさせる部署が設けられているという。この銀行だけではないのだろう。
もう一つ目に付くのは、言葉の使い方や接客態度が全くなっていない金融マンが増えたこと。マクドナルドみたいに笑顔で語り口をそろえる必要はないが、電話の応対で「うん」と尊大な態度を取られると、社員教育への投資もリストラされているのがよくわかる。
教育といっても、英語がしゃべれるとかMBA取得だとか、という資格ではない。与えられた当たり前の業務を確実にこなすこと、従業員としての安定した地位が確保され会社のために自発的に貢献しようという志気が維持されていること、顧客への接客の中で必要最低限の敬語、謙譲語、丁寧語が使えること、などの教育の余裕が必要なのではないか、と思うのであるが。

(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2003.11掲載)

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