04-09-01 : ひとこと言わせて頂けば「プロ野球選手会のストライキ騒動」(弁護士原 和良)

近鉄バッファローズとオリックスブレーブスとの合併、セ・パ一リーグ統合問題をめぐってプロ野球選手会のストライキが話題になった。土日2日間のストによる経済的損失は、100億円以上という試算がまことしやかにマスコミで騒がれている。ストは選手会のエゴだ、もっとファンのことを考えろという経済界やオーナーの非難の声も聞こえてくる。

 しかし、プロ野球の衰退と野球人口の減少に対して抜本的な対策すらないまま、このまま経営者の都合で合併・一リーグ制になったら、それこそ国民的損失は計り知れない。たかだか2日間のストの損失ではないはずである。
連合はじめ日本の労働組合は、選手会のストへの連帯・支持を表明した。しかし日本社会の現状を見たとき、ストライキを構えるのがプロ野球選手しかいないという悲惨な現状こそが異常である。いまや、プロ野球選手会が一番戦闘的な労働組合になってしまった。
いい加減な年金改革や小泉不況に、国民誰もが不満を感じながら声が一つにならない。竹中大臣に刺されてしまったUFJ銀行は、行員の賞与を7割削減し、年収は2割~3割削減されるそうだが、行員のみなさんには、生活を翻弄する金融監督庁と経営陣に怒り、今こそストライキでたたかってほしい。
失うものがなければ、何の気後れなく抵抗運動に参加する。日本人は企業社会、護送船団方式の中で、刃向かったら失うシステムを作ってしまった。労働者も住宅ローンや子どもの教育費を考えるとたたかうことに躊躇してしまう。でも今、労働者も中小企業も失うものがなくなるところまで追い込まれている。
もっと気軽に文句の言える日本社会ができたときに、明治維新以来実現できなかった日本人の心の近代化が、はじめてはじまるような気がする。

(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2004.9掲載)

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