16-03-30 : となりの弁護士「マンション紛争から見えるもの」(弁護士原 和良)

1  マンションには、さまざまな考え方、背景事情をもった人たちが同じ屋根の下で生活する。新築マンションを購入すると管理組合が結成され理事が選出される。我が国ではマンションの役員になりたくてマンションを購入する人は稀有である。

だから、部屋番号順に役員が回ってくる輪番制がとられるのが常である。何でこんな面倒な役を引き受けなければならないのだ、と誰しもが思う。マンションを購入した経験がある人なら、同じような経験をした方が多いだろう。
そうこうしているうちに、マンションにはさまざまな事件が起きる。建築した建設会社が倒産して保証サービスがなくなったり、管理会社が不正を行ったり、はたまた通帳を預かっていた理事長が億の修繕積立金を使い込んだり、いやはや次々に、問題は起こる、起こる。
最近は、マンションの基礎杭の手抜き工事もマスコミで大きな話題となった。
2 こんな時、住民は、イデオロギーを越えて団結する。何しろ家の購入は人生で一番高い買い物だ。何千万円もの大金をはたいて、また何十年ものローンを組んでやっと手に入れた我が家である。トラブルで、資産価値を失ったのではたまったものではない。
自民党支持者も公明党支持者も、共産党支持者も、…。大企業の役員も、労働組合の幹部も、サラリーマンも、…。人々は、憤慨し、自らの資産を防衛するために、住民どうしが団結する。大事なのは自分の人生であり、イデオロギーではない。「意識が、存在を規定するのではない。存在が、意識を規定する」とカッパしたのは、わずか150年前のマルクス先生である。
そして、トラブルに対処する共同作業を通じて、住民通しは、仲良くなる。廊下ですれ違っても挨拶すら交わさなかった者どうしが、一緒に食事したり飲みに行ったり、子供や仕事の話題を交わせる間柄になっていくのである。
住民は、マンション管理はそこに住む住民が管理に無関心になると、リスクが最大化し、自らの資産すら失う危機に陥ることを、住民は体験から学んでいく。
3 今の政治を見ていると、マンション紛争とことの本質は同じように見える。信頼していたディベロッパーは、まったく見え透いた手抜き工事を続けてきたのに全く責任を取ろうとしない、使い込みをやめない理事長をやめさせるには住民が立場を超えて団結する以外に解決しない。誰かがやってくれると思って評論家でいる限り何も変わらないのである。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2016年3月号掲載)

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