15-07-31 : となりの弁護士「おごれる者久しからず」(弁護士原 和良)

1 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり

沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす

驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し

猛き人もついには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ。『平家物語 上巻』

2 歴史は繰り返す。今の日本を見ていると、まさに、平家物語のこの文章を頭がよぎる。昨年12月に総選挙で大勝した安倍内閣は、7月16日、数の力に任せて違憲の安全保障法案を衆議院で可決した。反対運動は一時的に盛り上がり、内閣支持率は一時的に下落するかもしれないが、国民はそのうち忘れる、というのが官邸筋の考えだという。

今回の特徴は、法案の内容そのものへの反対はもちろんであるが、憲法は為政者の越権行為を禁じているのにそれを侵そうとしているという立憲主義違反への危機感、ロジカルな反対意見を聞かず数の力で強引に法案を成立させようというその政治手法に対する危機感から大きな反対運動が盛り上がっている。まさに、60年安保と同じ構図だと思う。若者が立ち上がっていることに、未来への光を感じるのは私だけではないであろう。

3 同じことは、東芝の1500億円にものぼる粉飾決算にもあてはまる。私欲や目先の利益を優先し、大義を踏み外せば、どんな大企業であっても一時期はしのげたとしても、いずれは大きなしっぺ返しを食らう。多くの企業の栄枯盛衰を見てきて、この原理は普遍だとつくづく思う。会社は、社会の幸福の増進のために存在するのであって、会社の利益のために社会や顧客が存在するのではないことを肝に銘じるべきである。

4 今、事務所では、所沢市の保育園で育児休暇を取得したら在園している上の子どもの保育が解除されるという新ルールをめぐって訴訟に取り組んでいるが、市はその場しのぎの場当たり的対応を重ねるばかりで決してその過ちを認めようとしない。子どもを持つ親であれば、育児休業終了後に上の子も下の子も保活(保育園に入園するための活動を行うこと)がいかに大変なことかを身をもって知っている。男女平等、女性の社会進出、少子化対策を政府が進める中で、こんな制度を導入する自治体に、若い子育て世代は居住する気にはならない。究極の少子化推進政策である。

5 18歳選挙権が導入された。これからの日本を担う若い人たちが主権者として意思表明ができる機会が広がった。もっともっと声を上げて欲しい。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2015年7月号掲載)

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