08-12-01 : となりの弁護士「不況と地方経済」(弁護士原 和良)

1 サブプライムローン問題に始まり、リーマンの破たん、GMはじめ米ビッグ3の経営行き詰まりというアメリカ経済の破綻に始まった世界大不況。日本にも円高ドル安、株価暴落により輸出依存の日本経済は、大打撃を受けている。企業業績の急激な悪化と倒産の増大、派遣社員や契約社員の削減をはじめ、新卒予定者の内定取り消し、正社員の希望退職と、日本経済はこの数カ月の間に、急降下した。

誰がこんな大激変を予想していただろうか。地球温暖化で暖冬らしいが、中小企業と庶民のふところは数年来なかった厳しい冷え込みだ。年を越せない人々が増え、年を越しても、厳しい経済状況はしばらくは続くだろう。

アメリカ経済の破綻は、新自由主義経済理論の破綻の結末といわれる。アメリカのやることは正しいことと、これに追随し、国内で規制緩和や民間活力導入、競争至上主義を金科玉条にして推進してきた政治に対しての厳しい総括・反省が必要である。

2 この秋、九州の片田舎にある高校の100周年祝賀会に参加した。卒業から27年。同級生が20名ほど集まり、2次会3次会と久しぶりの再会を喜びあった。元首相の言葉ではないが、人生いろいろである。今年45歳を迎える私たちの世代。中には、初孫が生まれたという人もいて、時の流れを感じざるを得なかった。

新自由主義の経済政策の中で、地方の衰退は目を覆うほどである。陶磁器で有名な故郷の有田町の落ち込みは激しく、人々の生活と心をむしばんでいる。

ぼくらが子供のころは、豊かではなかったかもしれないが、もっと明るい街だった。倒産や借金で生活が破たんすると、田舎の人たちは「恥」の気持ちからコミュニティとの距離を置き始める。みんなで助け合って生きてきたコミュニティが、櫛の歯が抜けていくように壊れていっているのが地方の実態だ。地方の貧困は、心の貧困である。貧困と貧乏は違う。貧乏でも幸せな人生を送ることは可能である。しかし、貧困は、幸せを追求する前提条件である衣食住と子供の養育・教育環境を奪ってしまう。貧乏でも、社会参加できる社会、貧乏でも安心して子どもたちがのびのびと成長できる社会、年寄りが安心して暮らせる社会、社会のタメ(=溜め)がなくなっている。その回復が今求められている。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」2008.12掲載)

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