08-09-01 : となりの弁護士「アメリカの活力」(弁護士原 和良)

1 今年の8月は、ニューヨーク、ワシントンへ3週間ほど滞在する機会を持つことができた。ニューヨークでは、低所得者層の暮らすスパニッシュ・ハーレムに安ドミトリーに滞在し、アメリカの多民族国家の複雑さを体感することができた。ワシントンは政治の中心、ロースクールの授業の合間に、あのキング牧師が「私には夢がある」という有名な演説をしたリンカーン記念堂やワシントン記念塔を散策してきた。
ちょうどアメリカでは、大統領選挙のノミネートに向けたオバマvsマケインのキャンペーンが日増しに高まる時期で、どこへ行っても、両候補のTシャツやキャップやアクセサリーがお店に並んでいた。日本の選挙ではあまり見られない光景だった。

2 マケインは置くとしても、民主党大統領候補のオバマは46歳、共和党副大統領候補のペイリンは44歳の若さである。黒人、女性、働き盛りの40代が政治のトップに名を連ねるところに、アメリカの底力を感じないわけにはいかなかった。アメリカは移民の国。マイノリティだったヒスパニック系の国民は、今や人口では最大多数派で、2046年には人口の50%を超えると予測されている。白人は今では少数派。英語を母国語とする人の比率は年々減少していて、果たしてアメリカの公用語はこれから英語でよいのかということが真剣に議論されているところも、アメリカらしい。

3 君主のいない共和制の国アメリカのアイデンティティは独立宣言と合衆国憲法である。老いも若きも、コンサバティブもリベラルも、憲法と言論の自由に対しては、誇りを持っている。文書の原本が展示してある国立公文書図書館は全州・全世界からの見学者が列をなして入場を待っている。ワシントンのメインストリートにはコンスティテューションアヴェニュー(憲法通り)があり、皆が憲法を語る姿には日本との違いを感じた。

4 帰国すると、日本では福田首相が突然の辞任。こちらもにわかに解散総選挙が近づきつつある。こんな先の見えない時勢だからこそ夢を語る若い政治家が現れてほしいと思うのは私だけではないだろう。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」2008.9掲載)

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