19-10-28 : となりの弁護士「台風による第三者被害」(弁護士 原 和良)

1 この夏は、大型台風18号、19号による甚大な被害が関東、東北、長野などを襲った。台風の影響を受けて、事務所にも台風被害をめぐるいくつかの相談が来ている。

 

2 台風被害により自己所有の建物、自動車などが損害を被った場合、これは基本は自己責任である(公的な支援策は別として)。このような災害に備えて火災保険や賠償保険に加入しておくことが大事である。問題は、自宅の屋根瓦が飛んで隣家の家屋に損傷を与えた、マンションの植栽が倒壊してマンション駐車場の自動車が損壊した、など思ってもみない被害を第三者に与えた場合である。千葉では、ゴルフ練習場のネットが倒壊して鉄製の支柱パイプにより隣家が損壊した事例がマスコミでも大きく取り上げられた。

 

3 このような場合、民法上は、建築物の所有者及び占有者には工作物等の管理責任が発生する(*)。瑕疵とは、その物が通常備えているべき性能や品質、安全性を欠いている状態(欠陥)であることをいう。もし仮に、元々屋根瓦が外れかけているにもかかわらず、これを長期に放置していた、マンションの植栽が倒れかけていたにも関わらず管理組合はその補強を行っていなかった、ということであれば、瑕疵が存在したといえ、占有者や所有者は損害を被った第三者に対して賠償責任を負うことになるだろう。その瑕疵を原因とする危険がたまたま今回の台風を機会として現実化したということであれば、台風を理由に責任を免れることはできない。

 

4 問題なのは、通常の性能、品質、安全性は備えているにもかかわらず、未曽有の自然現象・災害によって、所有物・専有物が倒壊し第三者に損害を与えた場合は、そもそも瑕疵にあたらず不可抗力として責任を負わないというという結論になる。防衛策としては、自らがこのような被害に備えて賠償保険等に加入しておく以外にはない。災害による第三者被害は、誰もが加害者となり、また逆に被害者となるケースが考えられる。もっとも、これだけ異常気象が続く中で、台風被害は、想定外の自然災害と言えるのかどうか、地震対策と同じように、これからは台風被害があることを想定しての安全対策が求められる時代に入っていることは確かであろう。
(*)民法717条①土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者がその損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。②前項の規定は、竹木の植栽又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

 

以上

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