20-06-30 : となりの弁護士「テレワークの功罪」(弁護士 原 和良)

1 コロナで一気に広がったのが、テレワーク・在宅勤務という新しい働き方だ。満員電車のストレスから解放される、無駄な通勤時間が有効に使える、家庭生活との両立が図れると、歓迎する声が多く聞かれるし、今後コロナ感染がどうなるかに関わらず、テレワーク・在宅ワークは広がっていきそうだ。

 

2 ただ、いいことばかりではない。6月19日の毎日新聞に掲載された日本労働組合総連合(連合)の調査によると、在宅勤務により労働時間が通常勤務よりも長くなったという人の割合は、51.1%(男性58.4%、女性44.6%)であったという。また残業代が発生する時間外・休日労働をした人は38.1%で、そのうち残業代を請求しても認められなかった人が56.4%もいたという。

在宅勤務は、私生活と労働のメリハリがなくなりどうしてもモチベーションの維持が難しい。他方で、まじめな人ほど、通常以上に働いてしまうリスクもある。

突然のコロナ騒動で、とりあえず対応を迫られた感のあるテレワーク・在宅勤務。これから企業においては、在宅勤務の適正な労働時間管理、メンタルヘルスを含めた社員の体調管理、そして公平適正な業績評価をどう進めるか、が労務管理の大きなテーマとなりそうだ。

 

3 6月17日、つくば市で、在宅勤務の父親が、長女を小学校に送った後、2歳の娘を保育園に預けるはずだったのを忘れ、自宅の駐車場に止めた車内に約7時間放置して死亡させるショッキングな事故が起きた。発見された時には次女は、熱中症にかかりチャイルドシートの上でぐったりとしていたという。

父親は、仕事が忙しく頭がいっぱいで、次女を保育園に預けるのを忘れてしまったという。とても悲しい話だ。

 

4 これからどんどんテレワークは広まっていくのだろう。打ち合わせや商談もZOOMなどのオンラインで進めることが日常になりつつある。確かに便利でもあるし、遠くまで出張する必要もない。しかし、すべてがテレワーク、オンラインで終わるほど社会は単純ではない。リアルとリモートの使い分け、バランスが必要だろう。

アフリカのゴリラの研究で知られる山極壽一先生(京都大学総長)は、人間の五感は、「オンライン」だけで相手を信頼できないようにできている、という。オンラインは、信頼できる人との関係を維持するのには貢献できても、それだけでは新しい信頼関係はなかなか築けない。仕事とは、信頼関係で成立するものであり、五感を使った仕事はこれからもますます社会の中で重要になるだろう。

 

以上

 

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