21-12-28 : となりの弁護士「問答無用~独断と偏見に基づく今年の10大司法ニュース(前編)」(弁護士 原 和良)

1 木村花選手の自殺
 2020年5月22日、元女子プロレスラーの木村花さん(22歳)が、ネット上で誹謗中傷されたことを苦に自殺された事件で、東京地方裁判所は、ネット上で誹謗中傷を行った男性に対し、遺族である母親に130万円を賠償するよう命じる判決を言い渡しました。この事件を契機に、ネット社会での匿名の名誉棄損が大きな社会問題となりました。

 

2 生活保護切り下げ・大阪地裁違憲判決
 2月22日、大阪地方裁判所は、国による生活保護費の切り下げについて憲法違反であるとの画期的な判決を下しました。この種の行政訴訟で違憲判決が出されるのは、赤木さんの訴訟で国が認諾することに匹敵するくらい画期的な判決です。司法研修所同期の小久保哲郎弁護士が団長として取り組んだ事件で、同期の弁護士の奮闘に、自分もがんばらなければ、と励まされた事件でした。

 

3 元法相実刑判決&泉田議員 
 6月18日、妻河合杏里氏の衆議院選挙に絡み1億5000万円の資金を選挙の買収に使ったとして収賄罪に問われた元法務大臣河合克行氏に対し、東京地方裁判所は、懲役3年の実刑判決を下しました。河合氏は控訴を取下げ判決は確定しました。こんな事件が今でもあるのか、とびっくり仰天のニュースでしたが、同じような買収疑惑が、今年の衆議院選挙に関しての新潟県の衆議院選挙でも問題になっています。泉田裕彦衆議院議員の告発の行方が注目されています。

 

4 ウィシュマさん死亡事件
 3月6日、名古屋出入国管理局に収容されていたスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが、必要な医療を受けられず死亡するという悲惨な事件が起きました。本当に恥ずかしい外国人蔑視の現状です。代理人の指宿昭一弁護士は、今年、アメリカ国務省から、人身売買問題に取り組む弁護士として「ヒーロー」に選ばれました。西へ東へと、激しく移動する指宿弁護士と様々な事件で共同受任する私としては、大変な迷惑な一年でしたが、その活躍に免じて許してあげます。

 

5 赤城さん自死訴訟認諾
 森友学園で国有地を不当に安く払い下げた問題で、財務省から公文書の偽造を指示され自殺した赤木俊夫さんの妻が、国に損害賠償を請求していた事件で、12月17日、被告国は裁判所の手続で請求を認諾しました。争わずに請求を「丸のみ」するということになり、訴訟は終結します。赤木さんは、なぜ夫が死ななければならなかったのか、真相を知るために裁判を起こしました。真相を闇に葬るための認諾と言われてもしょうがありません。国が支払う1億1000万円と遅延損害金は、私たちの税金で支払われます。

 

以上

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