21-11-29 : となりの弁護士「仕事ではなく時間を管理する」(弁護士 原 和良)

1 11月7日に中小企業診断士2次試験(論述試験)が終わり、少し時間に余裕ができた(気のせいではあるがが)ので、ジム・コリンズのビジョナリーカンパニーZEROを買って読み始めた。
 アメリカのROA優先(どれだけ短期に株式価値を高めたか)の株主資本主義とは対極にある、経営理念とビジョンを大事にする経営哲学は、私が身を置く中小企業家同友会や人を大切にする経営学会の哲学とも根本を共通にする考え方で、学ぶところが多い。

 

2 その中で、大変共鳴を受けたのが、「仕事ではなく時間を管理する」という考え方だ。
 「やるべきことをすべてやっているのに十分な時間がない、と感じたことはないだろうか。ここではっきり言っておこう。やるべきことをすべてやるのに十分な時間がある人は一人もいない。私たちはこれからもずっと、日々やりかけの仕事を抱えたまま床に就くのだ。生産的な人生を送っている人は、やりかけの仕事を抱えたまま死ぬのだろう。」
 コリンズは、仕事は無限で、時間は有限。だからこそ、無限の仕事を管理するのは不可能であり、管理すべきは時間だという。最も重要な問いは、「私は何をなすべきか」ではなく、「私はどのように時間を使うべきか」だという。

 

3 なるほど、仕事に追われていると、時間が足りないという思いが頭の中を支配し、どうやって時間を使うべきか、ということを考える前に、溜まった仕事に着手することを心理的に遠ざけてしまう。実際、遅ればせながら手を付けてみると、あっという間に片付いてしまう簡単な仕事だったと感じた経験はみなさんもないだろうか。

 

4 スティーブン・コヴィーは、「7つの習慣」の中で、仕事のマトリックスについて触れ、①緊急かつ重要、②非緊急かつ重要、③緊急かつ非重要、④非緊急かつ非重要、という4つのカテゴリーを提示し、人は④の非緊急かつ非重要な事象に大半の時間を浪費していることを指摘した。仕事(あるいは有意義な人生)にとっては、①の緊急かつ重要な事象を短時間に処理し、②の非非緊急かつ重要な自己投資や健康維持、5年、10年先を見据えた投資、権限移譲に十分な時間を充てることの重要性を説く。

 

5 この世に生まれて、やるべき仕事があり時間が足りない、というのは幸せなことだ。
 そんな幸せな人は、死ぬまで仕掛品を抱えたまま一生を終わる。仕事に追われず、仕事を追いかける人生にするためには、仕事の管理ではなく時間の管理が大切だ。

 

以上

Menu