23-09-28 : となりの弁護士「個人情報保護とコミュニティの希薄化」(弁護士 原 和良)

1 現在政府が進めているマイナンバーカードの普及推進をめぐり、これと医療記録の紐づけをするためのマイナ保険証をめぐる事務的ミスが発覚し、内閣支持率にも影響を及ぼす重大な問題となっている。
  マイナンバーカードの導入は、国民総背番号制と言われ、国家権力が個人のあらゆる情報を一元管理し、個人のプライバシー権を侵害するものとしてかつては大きな批判の対象となった。批判の対象となったからこそ、マイナンバーカードの取得は、任意であり強制ではない、という方針を取らざるを得なかった。
  しかし、マイナポイントの付与などの特典を付けて政府は普及拡大を図り、将来的な保険証の廃止という不利益をちらつかせて事実上の強制を焦って行おうとしたことが今回の失態の原因であろう。マイナンバーカードは、税の補足、銀行預金口座などの個人情報にも及び国民監視社会化の危険につながるものである。
  本来、監視されるべきは権力であって、政治家や高級官僚、税金の使い道こそが透明化されるべきであって、権力者については現金取引禁止とすれば、IT化は急速に進むであろうし、政治家や官僚のわいろの授受は激減するはずだが、そのような議論は全く進まない。

 

2 個人情報と言えば、ネット社会化やビッグデータの蓄積とAI技術の発展という社会的変化の中で、個人情報保護法による民間事業者・組織の個人情報の取扱いが厳格化され、そのことが社会に様々な弊害も引き起こしている。
  とりわけ個人情報保護の規制の対象が、PTAやマンション管理組合、町内会、学校の同窓会、などの民間組織、親睦団体にまで拡大された結果、本来個人の自由な情報交換や助け合いが必要とされる組織に閉塞感と活動の停滞を招いている。
  昔は当たり前だった名簿・住所録、電話帳はなくなり、隣に住む住民との連絡手段は把握できなくなった。小中高、大学の同窓生と連絡を取ろうともなかなか情報が得られない。
  過度に個人情報取得が制限されプライバシーが守られることにより、個人の孤立化が進む。そのもとで、集合住宅での孤独死や地域での児童虐待などの発見が遅れてしまう。最近は、地球温暖化の影響で異常気象が続き、風水害による災害被害や熱中症による孤独死も増加しているが、個人情報保護は、個人の放置化ともいうべき事態につながっている。

 

3 国家権力からの個人のプライバシー保護は、地域社会におけるコミュニティの強化でこそ図られるはずであり、これが権力分立・分権化という憲法の基本理念である。
  個人情報保護は、もちろん大事であるが、そのことによってコミュニティの崩壊が促進されるのは本末転倒である。

 

以上

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