24-03-28 : となりの弁護士「No One Is Perfect」(弁護士 原 和良)

1 弁護士という人のトラブルを扱う仕事を常としていると、良くも悪くも、ものの見方や考え方の角度が、少し違ってくるものである。
  私が相手にしている夫婦は、仲が悪いのが原則で、会社は労使で対立しているか資金繰りで倒産の危機にあるのが原則で、うまくいっている人はあまり相談に来ないのである。
  お医者さんが、毎日病気の人を相手にしているとのある意味では似ていて、私たち弁護士は、仕事中は、社会的・人間的なトラブル(病気)を抱えた人たちの診察と治療をする毎日なのだ。
  その意味では、ストレスフルな仕事ではあるが、依頼者(患者)のストレスを除去・軽減するお手伝いをすることはやりがいを感じる仕事である。
  働くとは「傍を楽にする」ことであり、働くことそのものである。
 

2 今週も様々な依頼者の事件に対応したが、依頼者も、相手方も、そして事件を依頼された私自身も、所詮は不完全な人間だ。
  川口春奈は、「世界は鉄でできている」とCMで言っているが、私から見れば、「世界は不完全な人間でできている」とでもいいたい気分だ。
  人は、目の前で起きている事象を自分の解釈のフィルターを通して見ている。すなわち、起きている事象は価値的には中立あるいは無意味であるのに、それに自分で意味を与えているのが人間である。
  自分なりの意味を付与して解釈しているから、人は恋をし、恋した人と対立し離婚する。世の中の紛争は、解釈の違いによる対立が根底に存在する。
 

3 弁護士は、喧嘩が好きなのではない。解釈の違いにより対立しても、それを白黒つけるのが最善の解決ではなく、解釈を修正することにより、あるいはより高いところから見た視点を獲得することにより、アウフヘーベン(ヘーゲル弁証法「あるものをそのものとしては否定するが、契機として保存し、より高い段階で生かすこと」「止揚」)することが真の解決であり、私たちの仕事は、そのお手伝いをすることだと考えている。
 

4 完璧な人などこの世にはいないのだ。どんなに優秀な人でも、どんなお金持ちでも、それは完璧とはほど遠い。「隣の芝生は青く見える」だけなのだ。良くも悪くも、不完全な人間どうしが、この社会を作っている。過ちを犯すこともあれば、ミスもする。感情のすれ違いも生じる。
  はらわたが煮えくり返ることもしばしばあるが、人間社会とはそんなものである。
  他人の失敗や過ちに寛容な社会が一番住みやすい社会だと思うのだが、最近の世相を見ていると、バッファー(ゆとり)がだんだんとなくなってきているような気がしてならない。
 

以上

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