16-06-29 : となりの弁護士「舛添東京都知事の辞任劇」(弁護士 原 和良)

1 6月21日に、舛添要一東京都知事が辞任した。家族旅行や家族の食事に政治資金を流用する、贅沢三昧の海外出張、そしてその後の釈明会見などあまり褒められた行動ではもちろんない。しかし、何で舛添氏だけが集団リンチのような追及を受けるのか、そこに何ともいえぬ違和感を感じた人も多いのではないだろうか。

2 もともと政治家のお手盛りで作られた政治資金規正法はザル法といわれている。家族旅行や公用車の私的利用で政治生命を絶たれるのに、公職選挙法違反の疑惑のあった小渕優子議員やURの事業に絡み金銭授受が告発され贈収賄の疑いがもたれていた甘利明大臣の問題は、参議院選挙を前に捜査は打ち切られ不問にされてしまった。

3 東京にとっては、オリンピック招致をめぐる汚職疑惑や当初の計画を反故にして膨れ上がる競技関連施設の建設費用問題の方が、本来大きな事件でありマスコミもこちらの方こそここに力を入れて取材・報道をしていただきたいと思うのは私だけであろうか。ちらほらと関与した政治家や企業の名も出てきているが、どうも報道は及び腰に見えてしまう。

こういうと怒られるかもしれないが、舛添氏は学者肌で大それた悪事が働ける人物ではないので、セコイ金銭流用しかホコリとして出てこなかったのだとも思われる。

4 おそらく、このくらいのほこりは、どの政治家をたたいても出てくるであろう。ましてや、石原元都知事の時代には、ほとんど登庁もせずにガラパゴス諸島に豪華視察旅行に出かけたりしていたのであるから、舛添氏の比ではない税金の無駄遣いが行われていたことは想像に難くない。

これではワイドショー的に、舛添氏をターゲットにして、国民の関心を逸らせることがもともと目的ではなかったのか、と思われても仕方がないであろう。

5 税金を取られる国民としては、当たらない高い宝くじを強制的に購入されているようなものであり、当たりくじ(利権や経済的見返り)にアプローチできる人はあらかじめ一部の人々に限られているようなものである。

このような中で、また人気投票的な選挙に付き合わされるのはもうそろそろ終わりにしたい。知事辞職から知事選投票日までわずか1か月半しかない。その期間にどのような東京都政を都民が望むのか、本当に都政を託せる人は誰なのか、一人一人が熟考するにはあまりにも時間がなさすぎる。

ワイドショー的な視点から脱して、じっくりと地方自治のあり方、首都東京のあり方について考えたいものである。

以上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2016年6月号掲載)

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