04-06-01 : ひとこと言わせて頂けば「人を見抜く力」(弁護士原 和良) 

弁護士のクライアントには、大きく分けて2つのタイプがある。1つは、すべてお任せタイプ。依頼した時点で、本人は神様にでも運命をゆだねたかのように悩みから解放され、良くも悪くもすべての結果を弁護士に委ねる。信頼され解決を任されるこのタイプは大変ありがたいし仕事もやりやすいが、任せっきりも問題である。大事な選択を迫られている中で、本人の意向を聞いても、全く反応なしの依頼者もいる。相手方との交渉で弁護士がいかに苦労を重ねていても我関せずの態度を取られると、「お前の事件だぞ」と愚痴の一つも言いたくなる。

 もう一つは、自分がすべてに関与しないと安心できないタイプで、すべて本人の意思を確認しないと何も進められない。代理人は、ある程度の裁量権を与えられて初めて力を発揮できる職業であるが、ギチギチにタガをはめられるとやりにくくてしょうがない。本人の指示が的はずれであっても本人納得のための失敗を敢えて冒さないといけないというのが弁護士のつらい職業である。「失敗しますよ」と言って、実際やってみて初めて本人が「弁護士の言うとおりだった」と気づいて、信頼を得ることも珍しくない。
弁護士は、最初の相談の時点で、目の前の依頼者がどちらのタイプなのか瞬時に判断して人を見て法を説かなければならない。必然的に眼力を鍛えさせられるがタイプの見立てを誤って、後で大変な苦労をすることもある。
人を見抜く力は、すべてのビジネスに必要な資質であるが、実践の中でしか身に付かないものでもある。

(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2004.6掲載)

Menu