14-09-30 : となりの弁護士「自治会とコミュニティ」(弁護士原 和良)

1 9月16日付けの東京新聞の夕刊に、宇都宮市の自治会脱退に伴うトラブルについての興味深い記事が載った(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014091602000067.html)。約1800人が加入する市内のある自治会を8世帯が一斉に退会した。高齢化し、毎月のように行われる自治会行事の担当や役員を引き受けられないというのが理由だ。自治会の役員会では、脱退の「制裁」として、防犯灯の撤去とゴミステーションの撤去を強行した。この地方の自治会は、防犯灯、ゴミステーションの設置に自治会が強力な権限を持っている。市は、住民どうしのトラブルとして、静観しているという。自治会組織が、任意加入団体であり、そこからの脱退は自由であるというのが、最高裁の判例にもある。果たして、自治会、市の対応はこれでよいのであろうか。

2 日本の多くの地域では、高齢化が進行し、お祭りや防災訓練、敬老会、など自治会が担ってきた行事が危機に瀕しているところも多い。他方で、若い人の生活スタイルも多様化して必ずしも休日は地域にという前提は消滅している。都市部あるいは特定の地域によっては、外国人労働者が集中し、日本語でのコミュニケーションも難しい地域もある。個人情報保護の過度な尊重は、地域の中におけるコミュニケーションの希薄化に益々拍車をかけたように思えてならない。

3 戦後形成された日本人の「幸せ」モデルがもはや維持できなくなっている今、多様な生き方を尊重し、支え合い、共生する新しいコミュニティの在り方が模索されるべきではないのか。地方自治体は、これまで、自治会、町内会を事実上の下部組織として行政サービスへの協力をさせてきた。そうであれば、「静観」するのではなく、地域の実態にあった新しいコミュニティづくりに積極的に助力をすべきであろう。

4 事例が違うが、同じことは、現在全国の別荘分譲地で起きている分譲地所有者と管理会社との管理をめぐるトラブルにも言えることである。1970年代から1990年ころまでに開発分譲された別荘分譲地は、住環境を維持整備するために購入時に管理会社と管理契約を締結し、管理費を支払うことが必須とされていた。しかし、これらの分譲地では定住する人が一定するに達し、一方で管理会社のサービスがほとんど不要になり、他方で、不動産開発の度に巨利を得てきた管理会社は経済不況にあえぎこれまでのサービスを維持できなくなって住民の不満は頂点に達している。ここでも、住民に対する公共サービスを担うべき地方自治体の態度は及び腰である。分譲地所有者と管理会社との管理委託契約は、民法上の準委任契約であり、いつでも脱退が可能であるはずであるが、裁判所は屁理屈をつけて解除を認めない。その態度は、宇都宮市の自治会の取った態度と全く変わらない。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2014年9月号掲載)

Menu